難病「結節性硬化症」に苦しむ女性を救ったピアノ...万雷の拍手を呼ぶまでの物語
“I Have a Rare Disease”
その数年前から国際大会に挑戦した。「グランド・プライズ・ビルトゥオーゾ」で年代別1位になるなど数々の賞を獲得し、カーネギーホールなど名門ホールで演奏する機会を与えられるようになった。
個人的に忘れ難いステージは、21年10月に開かれたTSC団体主催のチャリティーコンサートだ。聴衆の存在さえ忘れて自分の内奥からあふれるものを表現できたのはこのときが初めて。TSCによる障害を抱えていた子供時代のことや今の思いを全て込めて鍵盤に指を走らせた。演奏を終えると、予想もしていなかった盛大なスタンディングオベーションが会場を包み、いつまでも鳴りやまなかった。
今後は広くTSCを知ってもらい治療研究などの資金を募るため各地で慈善コンサートを開きたいし、後進も育てたい。既にTSC患者にピアノを教え、自分の経験を伝える活動も始めている。
私は長年、人に見られるのが苦手だったが、ピアノでは自分を表現することができた。言葉がうまく話せなくても音に乗せれば思いは伝わる。だから全てのフレーズ、全ての旋律に感謝している。私にとって、ピアノはかけがえのないパートナーなのだ。
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