コラム

スタートアップ経営者が感じる「退職代行」のやるせなさ

2024年07月06日(土)15時00分
カン・ハンナ(歌人・タレント・国際文化研究者)

そんな状況は、お隣の韓国も同様だ。最近まで韓国には、退職代行というサービスがなかった。

だが日本の事例が大きくニュースで取り上げられ始めた2020年頃から、ある労務法人が退職代行を開始。日本と比べるとまだ市場は小さいが、韓国の利用者の6割以上が20~30代の若者層だという。

最初の職場の勤続期間は平均18・8カ月にまで短くなり、入社してすぐに転職を考える人が非常に多いのが実態だ。

これから退職代行を担う企業が急増する可能性も高いだろう。近年、韓国やアメリカでは「静かな退職(Quiet Quitting)」という言葉も話題を呼んでいる。

特に20~30代の間で広がっているキーワードだが、「実際には退職したい気持ちを持ちつつも、最小限の業務だけは果たす行為」を意味するという。職場への情熱や愛情がないまま、退社したかのような心構えで働く若者が増えているということだろう。

時代の変化とはいえ、日本や韓国では「働くことの大切さ」とともに「働いたことが生み出す価値」がどんどん薄まってきている気がする。働くことの楽しさや得られる経験、人間関係をもっと大事にする社会になれたらいいなと願うばかりだ。

さよならに句点を打てば
 巡り合う春風のよう笑顔で会える
   ──カン・ハンナ

kanhhanna-portrait100.jpg
ソウル出身。2011年に来日し、2020年に歌集『まだまだです』で現代短歌新人賞受賞。NHKラジオ「ステップアップハングル講座」に出演し、起業家としてコスメブランドも立ち上げた。著書に『コンテンツ・ボーダーレス』

ニューズウィーク日本版 コメ高騰の真犯人
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月24日号(6月17日発売)は「コメ高騰の真犯人」特集。なぜコメの価格は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB、政策の柔軟性維持すべき 不確実性高い=独連

ワールド

韓国、対米通商交渉で作業部会立ち上げ 戦略立案へ

ビジネス

日経平均は反発、円安を好感 半導体株高も支え

ビジネス

村田製作所、マイクロ一次電池事業をマクセルに80億
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story