最新記事
原油

中東産原油依存に揺れるアジア...日本や各国の現状

2026年3月9日(月)14時10分
ソウルのガソリンスタンドで撮影。REUTERS/Kim Hong-Ji

ソウルのガソリンスタンドで撮影。REUTERS/Kim Hong-Ji

中東での戦争勃発による未曽有のエネルギー‌供給寸断を受け、アジアのエネルギー輸入国は中東以外の調達先確保に奔走している。​しかし、中東産原油への依存を減らすための長期的かつ現実的な選択肢は限られているのが実態だ。

世界最大の原油輸入地域であるアジアは、原油および⁠石油化学原料の60%を中東に依存している。米国・​イスラエルによる対イラン攻撃で始まった戦争は世界のエネルギー価格を押し上げており、インフレを加速させ経済成長に打撃を及ぼす恐れがある。

中東産原油を受け取れなくなった中国から東南アジアに至る製油所は、到着までに数週間から数カ月を要する高価な代替原油を探しており、一部は減産に踏み切っている。中国とタイは石油製品の輸出を停止し、ベトナムは通常オーストラリアへ向かう原油の輸出を差し⁠止めた。

だが、代替的な調達先には距離、製油所の形態、長期契約、コストといった障壁がある。

一例として西アフリカや米大陸から中国への石油輸送には1カ月半から2カ月を要するため、3カ月前に発注する必要がある。これに対し、ホ⁠ルムズ海​峡を経由して中国に到着するまでの期間は約25日だ。

また、油種を変更すると製油所での製品得率(元の原油量に対する石油製品の生産割合)が変わるため、運営方法を変更する必要がある。

コンサルタント会社サリー・クリーン・エナジーのアディ・イムシロビッチ代表は「新しい油種を製油所に投入する場合、カットオフポイント(原油を各製品に分ける境界温度)を変更し、ガソリンのブレンドも調整する必要がある。変えるべきことは多く、重労働だ」と説明。「多くの国で(調達源の)多角化が進んでいないのはこのためだ」と語った。

エネルギー・アスペクツのアナリスト、リ⁠チャード・ジョーンズ氏は、一部の政府は微調整としての多角化を模索するかもしれないもの‌の、アジアの多くの製油所は中東との長期契約に縛られているとして「端的に言えば、アジアに到着する中東産原油、日量約1600万バレル⁠を、大西洋盆⁠地(米大陸やアフリカ)の供給で代替することは一部であれ不可能だ」と指摘する。

日本企業
スパイス企業の新戦略...エスビー食品が挑む「食のアップサイクル」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米・イラン交渉団、和平目指し直接会談 パキスタン交

ワールド

米軍がホルムズ「掃海」とトランプ氏、イランTVなど

ワールド

バンス米副大統領、パキスタンのシャリフ首相と会談

ワールド

米が資産凍結解除に同意とイラン筋、米当局者は否定
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦によって中国が「最大の勝者」となる理由
  • 2
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけない副作用に研究者が警鐘
  • 3
    中国が恐れる「経済ドミノ」
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 6
    新しいアメリカンドリームは「国外移住」...5人に1人…
  • 7
    革命国家イラン、世襲への転落が招く「静かな崩壊」
  • 8
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 9
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 7
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 8
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 9
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 10
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中