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現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ「日本のお笑い」に挑むのか?

2025年11月14日(金)18時00分
※国際交流基金Webマガジン「をちこち」より転載

東大大学院での研究とテレビ収録をこなした一日についていぜんミームで表現。
8.5万の「いいね」がついた(いぜんさんのXより)


日本語を通して得られた異文化へのリスペクトと共感が私の世界を広げてくれる


――今では3カ国語(日・中・英)を操るトリリンガルですね。いぜんさんにとって、日本語習得はどのようなターニングポイントになりましたか?

いぜん: 日本語を学ぶことで、言葉の背景にある人々の文化や価値観、常識に触れられるようになったことが、何よりの収穫です。言葉の背景を知ると、おのずと文化へのリスペクトと共感が生まれます。

お笑いは常識への理解や共感があってこそ成立すると思うので、ようやく本当の意味で、日本のお笑い芸人としてのスタートラインに立てたのではないでしょうか。来日当時に比べて、今は毎日がとても充実しています。

お笑い芸人・いぜん

「いぜんのお笑いへの情熱にはかなわないよ」と日本人の芸人の先輩から言われたことがうれしく、今でも励みになっているそう。日本語学習はゴールではなく夢を叶える道具だといぜんさんは語る


――2026年春からは、日本の企業に就職し、社会人と芸人の両立になります。今後は、どのように活動していきたいですか?

いぜん:芸人としての活動時間に制限が出てきてしまいますが、大学院で研究しているエネルギー分野は私がお笑いと同じくらい没頭できる大切な世界です。

お笑いと大学院を両立したからこそ、日本社会をいろんな角度で理解できました。舞台に立つ芸人がかっこいいのと同じように、研究に一生を捧げる科学者もかっこいい。それは会社員も同じだと思います。

現在内定をいただいている会社での会社員としての経験は、まだ知らない日本文化や社会への理解にもつながりますし、より多くの日本に住む人々に共感してもらえるお笑いへのヒントにもなるはず。お笑いに限らず、誰かの役に立てて、結果を残せることはうれしいことですから、楽しんでやりたいと思います。

バージョンアップした私をぜひ楽しみにしていてください!


いぜん

お笑い芸人・いぜん

お笑い芸人。1998年、中国・北京生まれ。2019年に東京都立大学理学部に留学、その後東京大学大学院でエネルギー工学を学びながら、吉本興業所属のピン芸人として活動する。日本語能力試験(JLPT)のN1取得者で、TOEIC925点というトリリンガル。2026年春からは日本の一般企業に正社員として就職し、二足のわらじで芸人を続ける予定。憧れの芸人は千鳥の大悟。

X:@thousandmoney98
Instagram:@thousandmoney98
YouTube:いぜんの勝手


【関連リンク】
ウクライナ人日本語通訳者 ジガルコ・ヴィタリーさんに聞く「いま、ウクライナで日本語を使って仕事をするということ」(インタビュアー:日本文学研究者 ロバート キャンベルさん)
ドラマ『スアン日本へ行く!』主演フォンチーさん、番組制作陣にインタビュー:NHKワールド『ひきだすにほんご』がひきだす、コミュニケーションのかたち(前編)


※本記事は国際交流基金Webマガジン「をちこち」からの転載記事です。


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