最新記事

ウクライナ情勢

中国は「停戦仲介」で、ウクライナに領土放棄を迫っていた──米紙報道

China denies pressuring Europe to accept Russia's gains in Ukraine

2023年5月30日(火)14時50分
ジョン・フェン

モスクワを訪問した習誓平。4月20日から2日続けてプーチンと会談した Sputnik/Pavel Byrkin/Kremlin/REUTERS

<ロシアに撤退を求めない停戦案は「仲介」ではなく「ロシアの手先」だ>

ロシアとウクライナの仲介を買って出た中国は、西側諸国に対し、ウクライナ国内の占領地域をロシアに残す形で「即時停戦」を受け入れるよう迫っていたと、5月26日付の米ウォール・ストリート・ジャーナルが伝えた。中国は5月29日、この報道を否定した。

ウクライナのニュースサイト「ウクラインスカ・プラウダ」によれば、同国のドミトロ・クレバ外相は週末に、中国側の提案は受け入れられないと拒絶。ソーシャルメディアへの投稿で国民に対し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領もウクライナ政府も領土問題での譲歩は一切受け入れないと確約した。

中国政府の李輝ユーラシア事務特別代表は、5月16日から26日にかけてヨーロッパを歴訪。ウクライナを皮切りに、ポーランド、フランス、ドイツ、欧州連合(EU)、そしてロシアを訪れた。4月には習近平国家主席が、ウクライナ侵攻が始まって以来初めてゼレンスキー大統領と電話会談を行い、ウクライナで続く戦争について、中国として停戦に貢献していく立場を表明していた。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、李がポーランド、フランス、ドイツとEUの当局者に対して、すぐに戦闘を終わらせるよう呼びかけたと報道。ウクライナにとって受け入れ難い「紛争凍結」(現状で領土を固定する)という結末を示唆したとしていた。

クレバは国民に報道への「冷静な対応」を促す

李と西側当局者の会談に同席していたある外交官は同紙に対し、「我々はロシア軍が撤退しない限り、紛争凍結は国際社会の利益にかなわないと説明した」と語った。また別の外交官は同紙に対して、中国は「おそらく西側諸国の団結を試していたのだろう」と述べた。

中国外務省の毛寧報道官は、この報道を否定。李はウクライナでの紛争に関する中国政府の立場を伝え、意見の一致点を探るために「さまざまな当事者の意見や助言」に耳を傾けたのだと主張し、「中国が引き続き建設的な影響力を発揮していくことに、全ての当事者が期待を示した」と説明した。

クレバはウクライナ国民に向けたメッセージの中で、報道内容について確認するために、李が訪問したヨーロッパ諸国の当局者らに連絡を取ったと明かした。

その結果、「ロシアが占領しているウクライナの領土をロシアのものと認めるという発表や、それに関する話し合いがあったことを認めた者は一人もいなかった」と述べた。

クレバは国民に対して「冷静さと理性を保ち、報道に感情的な反応をしないように。我々はこのプロセスを管理している。ウクライナの知らないところで、何者かが我々の不利になるようなことをする事態は起きない」と述べ、中国が関与する話し合いは、ウクライナ政府が設定した条件に基づいて続けられるとつけ加えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル北部の警報サイレンは誤作動、軍が発表

ワールド

イスファハン州内の核施設に被害なし=イラン国営テレ

ワールド

情報BOX:イランはどこまで核兵器製造に近づいたか

ビジネス

マイクロソフトのオープンAI出資、EUが競争法違反
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中