最新記事

東南アジア

最後のご奉公? 97歳のマハティール元首相、マレーシア総選挙に出馬を表明

2022年10月12日(水)17時35分
大塚智彦
マハティール元首相 

次期総選挙への出馬を表明したマハティール元首相 Hasnoor Hussain / REUTERS

<今年初めにはICUに入っていたアジアの政界の重鎮が現職議員として復帰?>

マレーシアのイスマエリ・ヤコブ・サブリ首相は10月10日に連邦議会下院(222議席)の解散を発表し、規定により解散から60日以内に総選挙が行われることになるため11月中にも次の下院総選挙となる公算が高くなっている。

この次期総選挙にマハティール元首相が出馬する意向を11日に示しており、注目されている。97歳と高齢のマハティール前首相はここ数年心臓疾患などで入退院を繰り返すなど健康問題が取り沙汰されたが、最近は政治活動を再開するなどして、健康を回復しているという。

マレーシアは1957年の建国以来、与党「統一マレー国民組織(UMNO)」による政権が続いていたが、2018年に当時のナジブ・ラザク首相の汚職金権体質に業を煮やしたマハティール元首相が野党連合「マレーシア統一プリブミ党(希望連盟)」の候補として総選挙に立候補。マハティール人気と反ナジブ票の取り込みで勝利して、建国以来の政権交代実現の原動力となった。

その後首相に再就任して「汚職体質からの脱退」「中国による大型インフラ案件の見直し」などに手腕を発揮したが、2020年に党内分裂の危機を回避するためムヒディン・ヤシン首相に政権を託して退任していた。

長期政権で国家発展に貢献

マハティール元首相は1981年に首相に就任し、その後2003年まで6次に渡って政権を維持。任期中に日本などを経済成長の手本とする「ルック・イースト政策」でマレーシア経済の底上げ、そして成長に大きく貢献した。その業績は現在も国際社会では高く評価されている。

東南アジア諸国連合(ASEAN)でもインドネシアのスハルト大統領に次ぐ長期政権で存在感を示し、「東南アジアの優等生」として一時はASEAN盟主として国際社会でも活躍した。

その後、アブドゥラ・バダウィ首相を経てマハティール政権で国防相などを歴任したナジブ氏が首相に就任。政府系ファンド「1MDB」からの約7億ドルに及ぶとされる不正資金流用疑惑やナジブ夫人による浪費癖が露呈し、民心が政府を離れマレーシアを他のASEAN加盟国並みの「汚職大国」にまで貶める結果となった。

ナジブ元首相は2020年に背任、資金洗浄、職権濫用など7つの罪状で有罪判決を受けた。現在はやはり有罪となった妻とともに刑務所で服役中だ。

こういった事態に対して持ち前の義憤と国民への不信を回復するべくマハティール元首相は、2018年に政敵でもあった野党からの立候補に踏み切り首相の座に返り咲き、国民の期待に応えたのだった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中