最新記事

中国経済

2030年代に世界一の経済大国になるも、「豊かな経済大国」にはなれない中国

CAN CHINA OVERTAKE THE U.S. ECONOMICALLY?

2022年7月22日(金)07時43分
ミンシン・ペイ(本誌コラムニスト、クレアモント・マッケンナ大学教授)
上海

経済改革は繁栄をもたらしたが、習政権の強権体質が裏目に(中央のタワーは上海のテレビ塔) PHOTO ILLUSTRATION BY SHUNLI ZHAO/GETTY IMAGES

<30年代には瞬間風速的にアメリカを抜くも、一人当たりの国民所得は少ないまま。先端技術で後れをとり、日本のような「貯金」もないままに急速な高齢化社会へ突入する、いびつな超大国が油断できない理由とは?>

中国で改革開放政策が実質的に始まった1979年に、経済規模で中国がアメリカを超える日が来ると予想した人はほとんどいなかった。

当時の中国のGDPは1780億ドルにすぎず、対するアメリカはその15倍だったから、そんなことを言えば愚か者とのそしりを免れなかったろう。

だが2021年、中国のGDPは17兆7000億ドルに達した。これはアメリカのGDP(約23兆ドル)の約77%に当たる。購買力平価(PPP)で換算した場合の中国のGDP(20年)は24兆2800億ドルとなり、アメリカの20兆9500億ドルを15%近く上回っている。

ドル建てのGDPには一般的にその国の国力が、PPPで換算したGDPにはその国の生活水準が反映される。つまり中国経済の未来に関する最も気になる問いは、中国がアメリカをドル建てGDPで超えることは可能かどうか、ということになる。

中国はいまだに中所得国だから、理論上は成熟した高所得国であるアメリカよりも伸びしろは大きい。

国民の平均値で比べた場合、所有にしても消費にしてもアメリカには及ばないから、つまりは需要の伸びも中国のほうが大きくなるはずだ。加えて技術力や、労働者の教育水準や生産性でも中国はアメリカの後塵を拝している。言い換えると、生産性の伸びしろはアメリカよりも大きい。

米政府の予測によれば、20~30年の10年間に米経済は年平均2.3%しか伸びないという。対照的に中国の年平均の経済成長率はアメリカを上回りそうだ。信用格付け機関S&Pグローバル・レーティングは同じ時期の中国経済の成長率を、アメリカのほぼ2倍の年平均4.6%と予測している。

しかし、たとえ中国がこれだけの成長率を達成できるとしても、31年の経済規模は27兆7200億ドルで、アメリカの28兆8500億ドルにはわずかに届かない。中国がさらに数年間、アメリカを2ポイントほど上回る成長率を維持できれば、30年代半ばにはアメリカを超えられるだろう。

「奇跡」の再来は望めない

もし中国が年平均5%の成長率を維持できれば、31年の経済規模は28兆8100億ドルとなり、アメリカとほぼ肩を並べることになる。つまりあと10年で世界一の経済大国の座をアメリカから奪うには、中国は年平均5%を超える成長を達成しなければならないわけだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日銀利上げ巡る赤沢氏発言、片山財務相「手法は日銀に

ワールド

カナダ与党が下院過半数確保、補選勝利で カーニー首

ワールド

ドイツ連立政権が19億ドルの燃料税軽減策で合意、価

ビジネス

ソニーG、新ファンドの本格運営を開始 200億円超
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事の新シナリオ
特集:台湾有事の新シナリオ
2026年4月21日号(4/14発売)

地域紛争の「大前提」を変えた米・イラン戦争が台湾侵攻の展開に及ぼす影響をシミュレーション

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ「EV撤退」が示す、日本が失った力の正体
  • 2
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 3
    「いい加減にして...」ケンダル・ジェンナーの「目のやり場に困る」姿にネット騒然
  • 4
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 5
    トランプがまた暴走?「イラン海上封鎖」の勝算
  • 6
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 7
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音楽市場で…
  • 10
    「違法レベル...」ゼンデイヤの「完全に透けて見える…
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 8
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中