最新記事

選挙

バイデンの支持率低迷に悩む米民主党、中絶めぐる最高裁判断を中間選挙争点に

2022年6月27日(月)17時55分
デモをする中絶容認派の人々

米連邦最高裁が、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた1973年の「ロー対ウェード」判決を覆す判断を示したことについて、米民主党幹部らは今年11月の議会中間選挙に向けた争点としたい考えだ。写真は米首都ワシントンでデモに参加する、中絶容認派の人々(2022年 ロイター/Evelyn Hockstein)

米連邦最高裁が24日、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた1973年の「ロー対ウェード」判決を覆す判断を示したことについて、米民主党幹部らは今年11月の議会中間選挙に向けた争点としたい考えだ。共和党が議会過半数を制すれば、女性、避妊、同性愛同士の結婚などに悲惨な影響が及ぶと訴えていく。

最高裁は賛成5、反対4で今回の判断を下した。人工妊娠中絶に反対する共和党など保守派から歓迎の声が上がる一方、民主党や中絶の権利を主張する活動団体は、米国の女性の権利が後退すると抗議している。

民主党は今、11月8日の中間選挙で上下両院の過半数議席を失いかねない情勢だ。民主党のペロシ下院議長は記者団に対し「共和党は全米で中絶禁止を目論んでいる。議会過半数を握ってそれを実行するのを許すわけにはいかない」と主張。「われわれが11月に過半数を勝ち取らなければならないのは明白だ。全てがかかっている」と語った。

ペロシ氏はカトリック教徒。中絶の権利を支持していることを理由に先月、サンフランシスコの大司教から聖体拝領を禁じられた。

ロイター/イプソスの調査によると、米国民の約71%は、中絶に関する判断を政府が規制するのではなく、女性とその医師に委ねるべきだと考えている。民主党、共和党いずれの支持者層でも、こうした意見が過半数を占めた。

民主党は、最高裁の判断に対する有権者の怒りが上下両院での過半数維持につながると期待している。民主党は現在、両院で辛うじて過半数を握っている状態。バイデン大統領の支持率が低下しているため、大半の予測機関は今のところ、少なくとも下院では共和党が過半数を獲得する可能性が高いとの見通しを示している。

バイデン氏は24日、「この秋、ロー(対ウェード判決)が投票にかけられる。個人の自由が投票にかけられる。プライバシー、自由、平等、あらゆる権利がかかっている」と述べた。

民主党が、中絶の権利を巡るメッセージをどの程度、支持獲得に結びつけられるかは定かでない。民主党とバイデン氏は約1年半にわたってホワイトハウスと上下両院を支配しているにもかかわらず、中絶、投票権、社会保障費などの重要問題に関して、中核的な支持層を何度もがっかりさせてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、大きな衝撃なければ近く利下げ 物価予想通り

ワールド

プーチン氏がイラン大統領と電話会談、全ての当事者に

ビジネス

英利下げ視野も時期は明言できず=中銀次期副総裁

ビジネス

モルガンS、第1四半期利益が予想上回る 投資銀行業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 2

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア黒海艦隊「主力不在」の実態

  • 3

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 4

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 5

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 6

    【地図】【戦況解説】ウクライナ防衛の背骨を成し、…

  • 7

    訪中のショルツ独首相が語った「中国車への注文」

  • 8

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    「アイアンドーム」では足りなかった。イスラエルの…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...当局が撮影していた、犬の「尋常ではない」様子

  • 4

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 7

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    猫がニシキヘビに「食べられかけている」悪夢の光景.…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中