最新記事

育児

粉ミルク不足、SNSで拡散する粉ミルクの手作りレシピに要注意!

2022年5月25日(水)19時30分
松岡由希子

乳児用粉ミルクを手作りするための様々なレシピが拡散している...... AaronAmat -iStock

<米国で粉ミルク不足となっているが、乳児用粉ミルクを手作りするための様々なレシピが拡散し問題となっている>

米国では、2022年2月に粉ミルクの生産で最大手のアボット・ラボラトリーズが「ミシガン州スタージスの工場で製造した乳児用粉ミルクが原因とみられる細菌感染症が発生した」としてリコールを実施したことから、乳児用粉ミルクが不足している。バイデン大統領は5月18日、「国防生産法」(DPA)を発動し、供給業者に対して粉ミルクメーカーに原料を優先的に供給するよう求めた。

乳児用粉ミルクを手作りするための様々なレシピが拡散

国内での粉ミルク不足により、フェイスブックをはじめとするSNS上では、乳児用粉ミルクを手作りするための様々なレシピが拡散している。このような動きに対して、数々の育児書を執筆し、カリフォルニア州の小児科病院「カラバサス・ペディアトリクス」の創設者でもあるタニア・アルトマン医師は「手作りの粉ミルクは乳児に不可欠な栄養を満たさず、成長や発達にとても危険で、病気になるおそれすらある」とし、「私の患者には粉ミルクを手作りしないよう勧めている」と述べている。

たとえば、無糖練乳と水、カロコーンシロップを混ぜるという1960年代からのレシピがフェイスブック上で広まっている。アルトマン医師は、このレシピのリスクについて「この添加糖類は乳児にとって安全でもヘルシーでもない」とし、「カロコーンシロップはかつて便秘の解消に使われていたが、効果はなく、病原菌を含んでいるおそれがあるため、けして勧めない」と指摘している。

また、「生後3週間経過した乳児には水を混ぜたオレンジジュースを与えてもよい」という投稿もSNS上で出回っている。これに対して、母乳育児医学アカデミー(ABM)は「生後6か月未満の乳児には水、茶、ジュースを与えてはいけない」と注意している。

「手作りの粉ミルクは命にかかわるおそれもある」

米国では乳児用として山羊乳は承認されていないが、フェイスブック上では、山羊乳での代替を勧める投稿もみられる。小児国立病院のガブリナ・ディクソン医師によると、山羊乳はヒトの乳児に必要な栄養素が不足しており、とりわけ山羊乳に不足する葉酸やビタミンB12は貧血の予防に不可欠だという。

米国小児科学会(AAP)では「手作りの粉ミルクは危険で、命にかかわるおそれもある」とツイッターを通じて注意を広く呼び掛けている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

24年の独成長率は0.3%に 政府が小幅上方修正=

ビジネス

ノルウェー政府系ファンド、ゴールドマン会長・CEO

ビジネス

米株「恐怖指数」が10月以来の高水準、米利下げや中

ビジネス

中国大手銀5行、25年までに損失吸収資本2210億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中