最新記事

K防疫

K防疫の敗北、病床不足で少なくとも17人が死亡

At Least 17 COVID Patients in South Korea Died Waiting for Hospital Beds Amid Surge

2021年12月15日(水)18時43分
エリン・ブレイディ
コロナ検査を受けるための長い列(12月15日、ソウル)

コロナ検査を受けるための長い列(12月15日、ソウル) Kim Hong-Ji-REUTERS

<韓国のコロナ新規感染は過去最多の7850人に達し、病床不足も深刻でついに本格規制強化へ方針転換>

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威をふるう韓国では、12月の第2週、自宅や療養施設で入院を待つ間に死亡した人がかなりの数に上った。

韓国保健福祉部の高官パク・ヒャンは報道陣に対し、新型コロナウイルス感染症の患者少なくとも17人が、病床不足のために死亡したと発表した。これは、感染者急増に伴い、医療資源が枯渇していることを示す一例にすぎないとパクは述べている。

韓国では現在、集中治療室(ICU)の86%が埋まっており、1480人以上の患者が入院治療を待っている。多くの国民が政府に対し、国民の命を守るため、厳格な行動制限を再び実施するよう求めている。韓国政府は15日、規制を再強化すると発表したが、遅きに失した感は否めない。

ある医師連合は12月13日に発表した声明の中で、「今、私たちが絶対的に必要としているのは、医療システムが(ウイルスに)対応する能力を回復できるようにするための緊急停止だ」と訴えた。「手遅れになる前に、(政府が)より強硬な手段を講じてこの危機を止めなければ、死者数が急増する可能性が高い」

通用しなかった経済優先策

韓国で現在起きている感染爆発は、公衆衛生より経済を優先させることが事態を悪化させる証拠だ、と専門家たちは指摘している。韓国民の81%以上がワクチン接種を完了しているが、ブースター接種を受けた人は13%しかいない。ワクチンの効果は時間とともに低下するため、韓国当局は国民に対し、ブースター接種を受けるよう呼び掛けている。

韓国疾病管理庁によると、14日の新規感染者数は過去最高の7850人にのぼり、過去24時間の死者は94人に達した。

韓国政府は6日に、規制をわずかに厳格化したが、ウイルスの勢いは止まらなかった。

当局は、COVID-19患者のための病床を増やすよう病院に圧力をかけており、13日以降、2回目と3回目のワクチン接種の間隔を4、5カ月から3カ月に短縮するなど、ブースター接種の迅速化を図っている。

コロナ以前の日常を取り戻すための第一歩として、文在寅政権が行動制限を大幅に緩和した11月初めの時点では、1日あたりの感染者数は2000人程度だった。

より大規模な集会、屋内での長時間の食事、学校の全面的な再開が可能になったが、ワクチン接種率が上昇しているため、たとえウイルスが拡大し続けても、入院者数と死亡者数は抑制されると当局は予測していた。しかし実際には、60代以上の入院が急増している。高齢者には、ワクチン接種が完了していない人や、ワクチンが2月に導入されてすぐに接種を受けたため、免疫が低下している人たちが含まれている。

韓国政府は15日、行動制限を再強化すると発表したが、12月に入っても国民の規制疲れを理由に規制強化に二の足を踏み、「過去に後戻り」することはないと宣言していた文大統領への逆風は避けられない。

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英インフレ率目標の維持、労働市場の緩みが鍵=ハスケ

ワールド

ガザ病院敷地内から数百人の遺体、国連当局者「恐怖を

ワールド

ウクライナ、海外在住男性への領事サービス停止 徴兵

ワールド

スパイ容疑で極右政党議員スタッフ逮捕 独検察 中国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中