最新記事

入管

親日家女性の痛ましすぎる死──「日本は安全な国だと思ってた」母親らが会見で涙

2021年4月21日(水)18時42分
志葉玲(フリージャーナリスト)
名古屋入管で収容中に亡くなったウィシュマさん(手前)

名古屋入管で収容中に亡くなったウィシュマさん(手前) 遺族提供

「すぐ助けて下さい。迷惑かけたくないけど、私は大丈夫じゃない」―先月に名古屋入管の収容施設で死亡したスリランカ人女性が支援団体へ宛てた手紙の一節だ。女性は幾度も助けを求めていた。だが、入管は女性を入院させず、最悪の結果となった。今月14日、母親ら女性の遺族がオンラインで会見を行い、「どうして娘を助けようとしなかったのか?上川法務大臣や菅首相に会って聞きたい」と訴えた。

日本の子ども達に英語を教えることを夢見て来日

亡くなったのは、ウィシュマ・サンダマリさん(享年33歳)。母親のスリヤラタさんは「子ども好きで、勉強を教えるのが好きでした。貧しい家庭の子どもにも『お金はいらないから』と勉強を教えていた優しい子でした」とウィシュマさんについて語る。

「スリランカ現地のインターナショナルスクールで日本人の子どもにも教えていた経験があり、日本人の子どもの礼儀やマナーの良さから、ウィシュマは日本が好きになり、日本に行きたいと思うようになりました。娘が海外で生活することは、とても心配でしたが、日本は安全な国だからと納得し、お金をかき集めて送り出しました。それがこんなことになるなんて...」(同)。

ウィシュマさんは、「日本の子ども達に英語を教えたい」という夢と共に、2017年に留学生として来日。だが、その後、ウィシュマさんは学費を払えなくなり通っていた日本語学校の学籍を失ったことで、在留資格も失ってしまった。さらにウィシュマさんは当時交際していた男性に「DV被害を受けた」と警察に相談したが、在留資格を失っていたことから、昨年8月、名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)の収容施設に収容されてしまったのだという。

ウィシュマさんが収容された当時、スリランカ行きの定期便は飛んでおらず帰国したくても帰国できなかったこと、また日本で勉強を続ける夢を諦められなかった等の事情からウィシュマさんは名古屋入管に収容され続けていた。今年1月頃からウィシュマさんは、吐き気・嘔吐、食欲不振などの体調の悪化を、面会に訪れていた支援団体のメンバー達に訴えるようになる。この時点で、既に収容当初より12キロ以上、体重が減少していた。法務省/入管庁による調査の中間報告によれば、今年1月22日から庁内診療室で受診するようになったが、今年1月28日、嘔吐に血がまじるようになり、外部の医療機関での受診をウィシュマさんは泣きながら求めたのだという。

体調が悪化しても入院させず

今年2月上旬頃から、自力で歩けず車椅子を使うようになるなど、ウィシュマさんの衰弱が著しくなる。前述の中間報告によれば、ウィシュマさんは、ほとんど水分しか取れず、お粥などをスプーン何さじか食べるものも吐いてしまうということが続き、2月中旬以降は寝たきりの状態になってきて、トイレも職員の介助が必要になってきたのだという。支援団体「START」(外国人労働者・難民と共に歩む会)の顧問、松井保憲さんは体調悪化が著しくなったウィシュマさんの様子は、一見して尋常でないものだったと語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国の対ロ支援、西側諸国との関係閉ざす=NATO事

ビジネス

NY外為市場=ドル、対円以外で下落 第1四半期は低

ビジネス

日本企業の政策保有株「原則ゼロに」、世界の投資家団

ビジネス

米国株式市場=下落、予想下回るGDPが圧迫
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中