最新記事

韓国

韓国の自動車が危ない?

2019年12月23日(月)16時30分
佐々木和義

韓国現代自動車の労働者は、約20年ぶりの低水準となるボーナスの受け入れを投票で決めた...... ARIRANG NEWS-YouTube

<世界の自動車メーカーが、生き残りをかけてグローバルに再編し、労使が団結するなか、韓国の自動車産業は労働組合に阻まれている......>

販売不振と労組の圧力で、韓国の自動車メーカーは"正念場"を迎えている。
韓国の中堅自動車メーカー3社が、2019年12月初旬、相次いで年末セールを発表した。ルノーサムスン自動車は準大型セダンSM7の最大500万ウォン(約46万円)引をはじめモデルごとに割引額を設定し、韓国GMも最大15%の割引に加えて中型セダンのマリブは最長72ヶ月の分割払い手数料を無料にする。双龍自動車も10%割引や老朽した軽油車から買い替える購入者に支援金を提供する。

文在寅政権になって強硬に転じたルノーサムスン自動車労働組合

韓国の中堅自動車メーカーは慢性的な赤字に悩まされてきた。不況と輸入車の攻勢で販売が伸び悩む一方、事業改善を労働組合が阻害しているのだ。

ルノーサムスン自動車の労働組合は2019年12月10日に投票を行い、賛成66.2%でストライキの実施を決定した。ルノーサムスン労組は、2015年から3年間、ストライキを行うことなく賃金交渉を妥結するなど「模範生」という評価を受けてきた。

サムスンは1998年、日産自動車から技術供与を受けて自動車産業に参入したが、通貨危機の影響から抜け出せず、事業開始1年半後の2000年に破綻し、仏ルノーの傘下に入った。ルノーサムスンの国内販売は10万台ほどで、ルノーブランドの輸出車や日産からの受託生産が自社ブランドを上回る。2018年には日産から受託した米国向けローグが釜山工場で生産する自動車の半分近くを占めていた。

ルノーサムスン労組が変わったのは文在寅政権が労働者優遇を推し進める2018年からだ。強硬派のパク・ジョンギュ氏が委員長に就任し、大幅な賃上げを要求してストを繰り返すようになったのだ。2018年10月から19年7月まで28回行われた部分ストで、月間生産量の25%に相当する5000台相当が支障を受けている。

ルノー本社は韓国工場のストを問題視し、日産は生産計画が立たないとして釜山工場に委託していた生産を自社の九州工場に切り替える。釜山工場の生産は半分に落ちる見込みでリストラは避けられないが、労組は強硬な姿勢を崩していない。

韓国GM労組組合員は鉄パイプを持って社長室に押し入った

韓国GMも労組が会社を危うくしている。2017年から18年にかけて米ゼネラルモーターズ(GM)が、赤字が続く韓国から撤退するという噂が浮上した。稼働率が20%まで落ち込んでいた群山工場を閉鎖し、政府系金融機関の産業銀行と米GMによる資金投入で撤退は免れたが、賃上げを要求する労組の組合員が鉄パイプを持って社長室に押し入った。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

国内債は超長期中心に数千億円規模で投資、残高は減少

ワールド

米上院、TikTok禁止法案を可決 大統領「24日

ビジネス

アングル:ドル高の痛み、最も感じているのはどこか

ワールド

米上院、ウクライナ・イスラエル支援法案可決 24日
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中