最新記事

ハッカー

ハッカー集団アノニマスが陰謀論のQAnonに宣戦布告

Anonymous vs. QAnon: Hackers Target Conspiracy Theory

2018年8月8日(水)17時53分
ジェイソン・マードック

仮面をつけてニューヨークの14丁目を行進するアノニマスのメンバー Shannon Stapleton-REUTERS

<トランプ支持者に陰謀論を吹き込むQAnonに、ハッカー集団アノニマスが怒りの挑戦状。すでにQAnonフォロワーらしき人々の個人情報がさらされ始まっている>

国際ハッカー集団「アノニマス」が、陰謀論でトランプ政権を擁護する「Q」とその支持者の総称である「QAnon(Qアノン)」にインターネット上で宣戦布告した。活動を妨害し、フォロワーの正体を暴くという。

【参考記事】トランプ政権を支える陰謀論集団「QAnon」とは何か

8月5日、アノニマスのツィッターのアカウント@YourAnonNewsに「QAnon作戦」と名付けられた動画が投稿された。アカウントには160万人のフォロワーがいる。

「われわれには計画がある」と、動画のなかでアノニマスは宣言した。「情報弱者や教育のない人々を利用するおまえたち(QAnon)を、このまま黙って放っておくわけにはいかない。われわれの集団は、異なる人格の集まりで、個々がそれぞれの事情をかかえているが、ひとつだけ共通するものがある。それはおまえたちのばかげた話に頭にきているということだ」

QAnonはアメリカのアングラ掲示板4チャンネルをはじめとするインターネットの闇の領域から派生した陰謀論集団でその正体は不明。「ザ・ストーム」とも呼ばれ、ドナルド・トランプ大統領が、アメリカ政府上層部のエリートによる陰謀や児童売買と秘かに戦っていると主張する。共和党支持者の女優ロザンヌ・バーも、QAnonの支持者の一人だ。

QAnonの投稿にはたいてい暗号のようなメッセージが含まれており、それをトランプ政権との関係を示す証拠と見る人々もいる。それ以外の人にとっては、単なる与太話だ。

抗議のためのサイバー攻撃

Qの投稿は、2016年に浮上した陰謀説「ピザゲート事件」にもしばしば触れている。ワシントンのピザレストランを拠点とする小児性愛の地下組織に、民主党の大統領候補だったヒラリー・クリントンが関与しているという話だ。この話を真に受けて証拠を掴もうと思った男が同年12月、銃を携えてピザレストランに押し入った事件も起きたが、もちろん、店には地下組織もクリントンが関与する陰謀もなかった。ネット上の噂にすぎない。

だがそれ以来、小児性愛組織に関するこの事実無根の陰謀論は、極右勢力を代表する主張となっている。

アノニマスは、ハッカーと政治活動家の自由な集団であり、リーダーや指令系統は存在しない。抗議手段として攻撃的な書き込みをする「荒らし」や情報のリーク、サイバー攻撃によるシステム妨害などを行うことで知られている。

QAnonと同様、ネット掲示板4チャンネルから派生した集団で、メンバーがつける仮面がシンボルだ。 過去には新興宗教サイエントロジー教会や、白人秘密結社KKK(クー・クラックス・クラン)にサイバー攻撃を仕掛けたこともある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ前米大統領、麻生自民副総裁と会談=関係者

ワールド

北朝鮮「圧倒的な軍事力構築継続へ」、金与正氏が米韓

ビジネス

中国人民銀、国債売買を政策手段に利用も=高官

ビジネス

米テスラ、新型モデル発売前倒しへ 株価急伸 四半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中