最新記事

韓国事情

夏バテ予防で食される韓国の犬肉 賛否渦巻いて、鶏肉の消費が拡大

2018年8月4日(土)10時00分
佐々木和義

賛否渦巻く韓国の犬食 Kim Hong-Ji-REUTERS

<夏の最も暑い時期の「三伏」の日に消費されている韓国の犬食。ここへ来て、賛否が渦巻いている>

韓国の動物保護団体が2018年7月27日、犬肉に関する調査結果を発表した。対象となった19歳以上男女1006人のうち、犬肉を食べたことがない人は47.5%で、過去に食べたことがある人は39.4%、最近も食べている人は13.0%だった。女性と30代以下は半数以上が食べたことがないと回答したが、男性と50代以上は食べたことがある人の割合が高かった。自発的に食べた人は24.3%で、周囲の勧誘で食したという人が多かった。

自発的に食べない理由は、ペットとして認識しているが42.5%で最も多く、非人間的な取り扱いと屠殺の懸念が24.0%、衛生への懸念が10.5%の順だった。回答者の70.2%が今後は食べないとしており、性別で見ると女性の84.0%、男性の56.1%が今後は食べないと回答している。

犬肉を摂取する人は、健康に良い・栄養食が38%で最も多く、ひとつの食べ物として食す人が10.1%で、おいしいからという回答は9.4%だった。

さらに4人に3人が周囲の勧誘で犬肉を食したという結果を受け、動物保護団体の関係者は、犬肉を強要する文化を根絶しなければならないと述べている。

賛否が渦巻く犬食

そもそも犬肉は多くが夏の最も暑い時期の「三伏」の日に消費されている。夏至を過ぎた3回目の庚の日を「初伏」、4回目を「中伏」、立秋後の最初の庚を「末伏」といい、3回の伏日を合わせて「三伏」という。伏日は鶏に韓方薬の材料やもち米を詰めて煮込む参鶏湯を食べる日として知られるが、犬肉スープの補身湯を食す人も少なくない。

初伏を2日後に控えた7月15日、ソウル光化門広場に隣接する世宗文化会館前で動物保護団体が「犬・猫屠殺禁止のための国民大行動」を行なった。主催者推計で約600人が参加し、犬・猫の虐殺禁止法の制定や不法屠殺の処罰を訴えた。

犬を食用にしている国は、中国、ベトナム、北朝鮮と韓国だが、農場があるのは韓国だけで、また文在寅政権発足後の1年間に大統領府に提出された苦情のなかで犬や猫など愛玩動物の食用反対が1027件で最も多いとして、政府の対応を求める声明を出している。

同じ日に犬食賛成派も光化門広場に近い東和免税店前で動物保護団体を批判する集会を開いている。「犬が優先か、人が優先だ」などのプラカードを持ち、動物保護団体は犬の繁殖農家の生存権を脅かしていると主張した。

賛成派集会の参加者が光化門広場への移動を試みたが、警察官の静止で大きな摩擦は起こらなかった。両団体の衝突を防ぐため、240人の警察官が投入されていた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

再送-イスラエル、近くラファに侵攻 国内メディアが

ビジネス

ECB、追加利下げするとは限らず=独連銀総裁

ビジネス

焦点:企業決算、日本株高再開の起爆剤か 割高感に厳

ワールド

人口減少は日本の最大の戦略課題=有識者の提言で林官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中