最新記事

貿易戦争

ハーレー、生産一部米国外へ トランプ貿易戦争が裏目に

2018年6月26日(火)17時45分
ニコール・グッドカインド

「アメリカの象徴」ハーレーを追い出すはめになったトランプ(2017年2月、ホワイトハウスの前でハーレーと)  Carlos Barria-REUTERS

<トランプは、ハーレーのようなメード・イン・アメリカ製品を守らなければならないと訴えていたのだが、とんだ裏目に>

オートバイメーカーのハーレーダビッドソンは6月25日、欧州連合(EU)が発動した追加関税によるコスト増を避けるため、生産の一部をアメリカ国外に移すと発表した。

ウィスコンシン州ミルウォーキーに本社を置くハーレーにとって、EUはアメリカの次に大きな市場だ。2017年には、EUだけで4万台近くのオートバイを販売している。しかし、ドナルド・トランプ米大統領がEUに貿易戦争を仕掛けたことへの報復で、EUはアメリカ製オートバイの輸入関税を6%から31%に引き上げた。アメリカからEUにハーレーを輸出する場合、1台当たり2200ドルのコスト増になるという。

ハーレーは声明の中で、「この大幅なコスト増を販売店や消費者に負担させることになれば、EU事業は大きなダメージを受けることになる」と説明した。

国内企業も敵になる?

EUは22日、バーボンやオートバイ、オレンジジュースなどのアメリカ製品に34億ドルの追加関税を課した。EU製のアルミニウムと鉄鋼に追加関税を課したトランプに対する報復だ。トランプは3月、「貿易戦争はよいことだし、楽勝だ」とツイート。以来その言葉通りEUやメキシコ、カナダ、中国からの製品に対する関税を引き上げ、報復されればさらなる関税で対応してきた。

「ハーレーダビットソンはアメリカでの生産に強いこだわりを持っている。アメリカでの生産が、世界中のライダーに高く評価されているからだ」とハーレーは述べた上で、「EUの関税を回避するために国外生産を増やすのは本意ではないが、EUの人々にオートバイを購入してもらい、事業を継続していくための唯一の方法だ。ヨーロッパは極めて重要な市場だ」と説明している。

トランプはかねてから、ハーレーのオートバイを「アメリカの象徴」と絶賛し、不公正な貿易相手に罰を与えることでハーレーのような企業の雇用を守らなくてはならない、と主張してきた。今回はそれが完全に裏目に出た格好だ。

トランプにひるむ様子はない。「ハーレーダビッドソンがすべての企業の中で白旗を振った最初の企業になろうとは驚きだ」とツイートし、国内で耐えなかったハーレーを責めた。

トランプは既に中国とEUを敵に回しているが、アメリカ企業の一部が敵に回る日も遠くないかもしれない。

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期

ビジネス

英インフレ、今後3年間で目標2%に向け推移=ラムス

ビジネス

米国株式市場=S&Pとナスダック下落、ネットフリッ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中