最新記事

感染症

致死率75%、ワクチン未開発の「ニパウイルス」、インドで感染拡大の可能性

2018年5月23日(水)17時20分
高森郁哉

致死率は75%の「ニパウイルス」は、コウモリやブタとの接触を通じて感染する CraigRJD-iStock

<インド南部ケーララ州で、致死率は75%の「ニパウイルス」の感染が確認され、これまでに10人が死亡した>

インド南部ケーララ州で、致死性が高く現在までワクチンが開発されていない「ニパウイルス」の感染が確認され、これまでに10人が死亡した。USAトゥデイCNNなどが報じている。

ニパウイルスとは

国立感染症研究所の説明によると、ニパウイルスは1997年〜1999年にマレーシアの養豚場労働者の間で急性脳炎が流行した際に、病原体として初めて確認された新種のウイルス。

ニパウイルスは人間、コウモリ、ブタとの接触を通じて感染する。感染した患者には、急な発熱、頭痛、めまい、嘔吐などの急性脳炎の症状が現れる。これまでワクチンは開発されておらず、治療は対症療法に限られる。

ニパウイルスは21世紀に入ってからもアジアで散発的に流行している。世界保健機関(WHO)の統計によると、2001年〜2012年の間にインドとバングラディシュで計280件の感染例が確認され、211人が死亡。致死率は75%となっている。

ケーララ州の状況

報道によると、ケーララ州の保健当局は5月22日、ニパウイルスに感染した患者のうち少なくとも10人が死亡したと発表。死者との接触があった90人以上を隔離したが、ほかにも発熱などの症状が出た患者数百人が病院に殺到しているという。

同州政府はWHOなどに報告し、感染拡大を防ぐため専門家チームの派遣を要請した。

隣州でも感染の疑いがある患者が隔離

感染はケーララ州を越えて広がっている可能性がある。ニュー・インディアン・エクスプレスの記事によると、ケーララ州に隣接するカルナータカ州のマンガロール市で、ニパウイルスに感染した疑いのある患者2人を隔離したという。

そのうち1人は20歳の女性で、今回の流行で看護師が死亡したケーララ州コーリコード市の病院を訪れ、当該看護師と接触していた。もう1人は75歳の男性で、旅行の履歴はないが、両者とも発熱や頭痛の症状があるという。カルナータカ州当局は、2人を隔離し、血液サンプルを分析に回したと説明している。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD

ビジネス

新藤経済財政相、あすの日銀決定会合に出席=内閣府

ビジネス

LSEG、第1四半期契約の伸び鈍化も安定予想 MS

ビジネス

独消費者信頼感指数、5月は3カ月連続改善 所得見通
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中