音声認識の仁義なき戦いが始まった
しかしグーグルに言わせれば先に手を出したのはアマゾンだ。「消費者が両社の製品とサービスを自由に利用できるよう協議してきたが、アマゾンは当社製品クロームキャストやグーグル・ホームを扱わず、グーグルキャストの利用者には(アマゾンの)プライム・ビデオを見られなくし、当社系列のネスト社製品の扱いも一部停止した。これでは互恵関係を築けない」
この件についてアマゾンに問い合わせても、回答はなし。消費者の利益より、ライバルとの縄張り争いが大事なのだろう。
ネット通販最大手で端末やソフト、コンテンツの分野にも進出したいアマゾンは、自社サイトでグーグル製品を排除。対抗上、ネット検索最大手で端末やソフト、コンテンツを強化したいグーグルも自社コンテンツをアマゾン製品から遮断した。そういう構図だ。
先行2社による泥仕合
仁義なき縄張り争いと言うほかないが、いかに競争の激しい業界とはいえ、ここまでやるのは尋常ではない。どうやら問題は、どこのサイトで何が買える、どこのデバイスで何が見られるという程度の話ではないらしい。こんなことをしていればどちらの企業イメージも下がるだろうし、躍進著しい動画配信サービスのネットフリックスや、何よりもアップルを利することになりかねない。それでも意地を張り合うのはなぜか。
それは音声認識という新たな市場の覇権をめぐる戦争が勃発寸前だからだ。音声認識のプラットフォームには、今のところアマゾンのアレクサ、グーグルのアシスタント、アップルのSiri(シリ)、マイクロソフトのコルタナがある。ただしアップルとマイクロソフトはまだ端末を発売していない。
端末で先行しているのはアマゾン・エコーと、これに続いたグーグル・ホームだ。先陣を切ったアマゾンのエコーは評判がよく、この分野で一歩リードしてきた。しかしグーグルは、いずれ自社のプラットフォームがアレクサを駆逐できると踏んでいる。なにしろAIの分野ではグーグルがどこよりも先行しているからだ。
アマゾンもそれは承知で、だからこそ自社の通販サイトを通じてアレクサ搭載製品を精力的に売りまくる一方、グーグル製品は扱わないでいる。
対するグーグルは、小売り部門でアマゾン最大のライバルであるウォルマートと組んだ。だからウォルマートの店ではグーグル・ホームを売っているが、エコーは置いていない。当然の選択である。エコーの購入者はアマゾンのサイトで買い物をするので、二度とウォルマートを利用しなくなるからだ。一方、グーグル・ホームでは遠からずウォルマートの通販サイトを利用できるようになるだろう。