最新記事

朝鮮半島

北朝鮮、亡命の兵士を追って軍事境界線を越境していた 国連軍が非難

2017年11月22日(水)13時21分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

軍事境界線を越境して韓国側に侵入した北朝鮮兵士 ReutersTV

<米軍などからなる国連軍司令部は、13日に韓国側に亡命した北朝鮮兵士を追って、北朝鮮軍が軍事境界線を越境していたと記録映像を公開した>

13日に北朝鮮との軍事境界線を越えて韓国側に来た北朝鮮兵士について、国連軍司令部は22日午前記者会見を開き、13日に北朝鮮郡が軍事境界線の南側に銃撃を行い、その際に1名の兵士が一時軍事境界線を超えて南側に入ったことを確認したと発表した。

韓国メディアのNEWSISなどによると、国連軍司令部は13日当日の記録映像を記者団に公開して、北朝鮮軍の行動を説明。映像は、北朝鮮亡命兵士が乗った車が速い速度で板門店に接近する場面から始まる。


■北朝鮮兵士の亡命時の記録映像を公開した記者会見 YTN / YouTube

車が障害物で動けなくなり、亡命兵士が走って南側に逃げ込んだ後、北朝鮮軍4人が銃撃し、そのうち1人が軍事境界線を越えて、再び戻る様子も記録されている。

この件について国連軍司令部は「北朝鮮軍が軍事境界線を越えて南側に銃撃をしたということ、北朝鮮兵士が短時間でも軍事境界線を越えたことを確認した。これは2度の国連停戦協定違反という重大な問題だ」と話した。

調査結果を発表した国連軍司令部広報室長は「亡命者が倒れていた地域は、北朝鮮側の警戒所からも見られる位置にありとても危険な状況だった。国連軍司令部は板門店共同警備区域で発生した事件に適切な措置をとり、緊張が高まることを防ぎ、人的損失もなく終えた」と語った。

国連軍司令部は22日午前、北朝鮮側に対し、今回の調査についての議論と、今後同様の休戦協定違反が発生することの対策に向けた会議を要請した。

だが北朝鮮が話し合いに応じる可能性は低い。金正恩は党第1書記に就任後、2013年に停戦協定の無効化を一方的に宣言。国連軍司令部と北朝鮮軍の対話や、板門店の直通電話を4年間不通にしているため制裁手段や対話チャネルがないのが実情だからだ。

瀕死の重傷を負った亡命北朝鮮兵士は......

一方、亡命した北朝鮮兵士が収容されている京畿道水原市の亜州大学病院は「患者の意識ははっきりしており、治療には非常に協力的だが、2回の手術と亡命時の銃撃によるショックなどで心理的に憂うつな状態を見せている」と発表した。

北朝鮮兵士は、亡命した当時、腹部と右側骨盤、両腕、脚など5か所以上に銃傷を負った状態で保護され、13日と15日の2回手術を受け、18日から人工呼吸器を外すことができる状態にまで回復している。手術の際に発見された寄生虫についても治療中で、追加検査で発見された結核とB型肝炎についても治療する予定。今後は感染症などを防ぎつつ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)についての検査と治療を行っていく方針だという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイランに攻撃か、規模限定的 イランは報

ビジネス

米中堅銀、年内の業績振るわず 利払い増が圧迫=アナ

ビジネス

FRB、現行政策「適切」 物価巡る進展は停滞=シカ

ビジネス

英インフレ、今後3年間で目標2%に向け推移=ラムス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中