最新記事

核兵器

北朝鮮が東京とソウルを核攻撃すれば、犠牲者は最大380万人

2017年10月6日(金)13時36分
ソフィア・ロット・ペルシオ

北朝鮮が核兵器で先制攻撃に出る可能性は現状では低いが KCNA-REUTERS

<北朝鮮の核攻撃能力を考慮した米研究機関の試算で、東京とソウルが核攻撃された場合に想定される犠牲者は40~200万、最大で380万に上る可能性が>

朝鮮半島で戦争が起きた場合、人的犠牲を伴うことは、米国防総省も長らく警告している。しかし北朝鮮が日本と韓国を核兵器で攻撃した場合、どれだけの被害をもたらすか試算した最新リポートが公表された。

リポートはジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院の北朝鮮監視プロジェクト「38ノース」が、北朝鮮の最新の攻撃能力を考慮して作成した。

執筆したのはデータ解析コンサルタントのマイケル・ザギュレクJr.で、北朝鮮が15キロトン(広島原爆と同レベル)から250キロトン(9月3日に北朝鮮が実験した「水爆」と同レベル)まで、25の戦略核兵器を保有していると想定して、様々なシナリオを検証した。

リポートによると、想定される犠牲者数は、北朝鮮の核弾頭の確実性に左右される。「ソウルと東京に複数の核兵器が使用された場合、40~200万人の犠牲者が想定される」

また「同数の核兵器が最大の威力を発揮した場合、犠牲者は130~380万人に増える可能性がある」と、分析している。

金正恩政権の目的は世界征服ではなく、体制維持にあるようなので、北朝鮮が先制攻撃を仕掛ける可能性は現状では低い。しかし北朝鮮の核の脅威は、外交圧力や経済制裁でどう対応するべきか考慮するうえで重要な要素となる。

北朝鮮の国営メディアの複数の記事によれば、北朝鮮が核兵器を開発する目的は、アメリカからの攻撃の脅威に対抗し、国際社会でより重要な存在になるためだとされている。

重要イベント続く

在韓米軍のビンセント・ブルックス司令官は、北朝鮮が国際的な影響力の強化のために核抑止力を求めていると見ている。「金正恩政権は、韓国、日本、アメリカ全土、その他のアジア地域内外の国々に対して十分な攻撃力を持てば、国際的な発言力を高められると考えている」と、今年7月に語った。

さらに北朝鮮は、兵器製造で収入も得ている。通常兵器と軍事装備の輸出(2009年の国連安全保障理事会の決議で禁止されている)によって現政権が多額の収入を得ていると、米ワシントン・ポスト紙は今月1日報じた。

金正恩体制になって以降、北朝鮮の核兵器開発は加速している。金正恩は過去6年間で、父親と祖父の時代の合計より多い核実験を行っている。ここ2カ月では、日本の上空を通過して太平洋に落下する軌道のミサイル実験によって、明らかにこれまでより挑発レベルを上げている。

来週は北朝鮮や周辺国で大きなイベントが続く。北朝鮮は10日に朝鮮労働党創建70周年の記念日を迎える。その前日9日はアメリカの祝日「コロンブス・デー」にあたり、18日には中国で共産党大会が始まる。北朝鮮はしばしば国内外のイベントに合わせて実験などを行うため、日本やアメリカの関係当局は、来週北朝鮮が新たな挑発行為に出ることを警戒している。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=続伸、マグニフィセント7などの決算に

ビジネス

NY外為市場=円、対ユーロで16年ぶり安値 対ドル

ビジネス

米テスラ、新型モデル発売前倒しへ 株価急伸 四半期

ワールド

原油先物、1ドル上昇 米ドル指数が1週間ぶり安値
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 10

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中