最新記事

災害

ハービーはなぜ「前代未聞」のハリケーンになったのか

2017年8月31日(木)18時00分

8月29日、大型ハリケーン「ハービー」が直撃したテキサス南部のメキシコ湾岸地域では、豪雨による洪水の影響で全米4位の人口を持つヒューストンの一部が冠水し、少なくとも13人が死亡し、数万人が避難する大災害となった。写真は24日撮影のハービー衛星画像。米海洋大気庁提供(2017年 ロイター)

大型ハリケーン「ハービー」が直撃したテキサス南部のメキシコ湾岸地域では、豪雨による洪水の影響で全米4位の人口を持つヒューストンの一部が冠水し、少なくとも13人が死亡し、数万人が避難する大災害となった。

25日の上陸後、熱帯低気圧に勢力を弱めてもなおテキサスに甚大な被害をもたらしたハービーは、なぜこれほど強力で、速度が遅いハリケーンとなったのか。疑問点をまとめた。

●「前代未聞」のハリケーンと呼ばれる理由

ハービーの降水量は、テキサスの一部で1250ミリを超え、なお増加している。ヒューストンの米国立気象局によると、この降水量は過去のいかなるハリケーンよりも多い。

上陸時に時速209キロに達したハービーの風速や、被害をもたらした高潮の高さ自体は、前例のないレベルではなかった。だが、ハービーは失速後、湾岸寄りの地域にとどまったため、海面から湿気を吸い上げて内陸に雨を降らせる時間が長かった、とジョージア大で気象科学を担当するマーシャル・シェファード氏は説明する。

このようなハリケーンが、上陸後長時間とどまるのは「非常に珍しい」と、コロンビア大のスザナ・カマルゴ氏は語る。

●なぜハービーは動かなくなったか

ほとんどのハリケーンや暴風雨は、風に押されて進む。上陸後も同様だが、次第に勢力が弱まっていく。今回は、2つの高気圧が互いに押し合って「無風地帯」(デッドスポット)が生まれ、ハリケーンが同じような場所に長時間とどまったり、一時はメキシコ湾の海上にコマのように押し戻されたりした。

このような状況が生じるのはまれで、テキサスにとって「不運だった」と、フロリダ州立大のジェフリー・シャノン氏は言う。

「このハリケーンは、風の流れの中のデッドスポットに偶然はまってしまった。だが、今後数日の間に再び動き出す兆しがある」と、シャノン氏は分析する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB当局者、利下げ急がない方向で一致 インフレ鈍

ビジネス

訂正-NY外為市場=ドル上昇、米指標やFRB高官発

ビジネス

中東情勢悪化、世界経済に大きなリスク=独財務相

ビジネス

訂正-4月米フィラデルフィア連銀業況指数、15.5
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中