最新記事

インドネシア

「次の次のインドネシア大統領」が語るイスラム急進化の真実

2017年8月18日(金)16時10分
長岡義博(本誌編集長)

――インドネシアの民主化の進展についてどう考えるか。

かつて世界はインドネシアを悲観的に見ていた。国家としての統合すら疑問視されていた。国家として生き残れるかも定かでないと考えられ、実際に分裂が問題になっていた。

政治学を学ぶ1人の学生として見ても、インドネシアは興味深い民主化の過程を歩んでいる。インドネシアでは全国で540もの直接選挙が行われている。そしてそのほとんどでスムースな選挙が実現している。過去5年間、300ほどの選挙に異議が唱えられ、憲法に基づく裁判所での審議によって結果が決められた。ストリートファイトでなく、だ。負けた政党もその結果を受け入れた。これはインドネシアで民主主義が根付いていることの何よりの証拠だ。

人権についての意識も広がっている。選挙委員会の組織も整備されている。何せこんなに多くの選挙を実施しなければならないので。報道も自由だ。自由すぎるほどだ(笑)。

(インドネシア政治の)腐敗問題については、洗練された政党助成制度を実現できれば解決するだろう。選挙にはカネがかかる。それは誰より私がよく知っている。たとえば500人の集会で全員にコーヒーやお茶を出す。いくらかかる?

【参考記事】スーチーが「民族浄化」を批判できない理由

――インドネシアがISISの東南アジアの拠点になる、という懸念もある。過激なテロ組織の拡散をどう防ぐ?

治安はジャカルタにとって決して大きな問題ではない。でなければ、寿司レストランがこれほどジャカルタで増えていないだろう。

結局、われわれは中東から遠い場所に位置している。民主主義も根付いている。政治的な暗殺も起きていない。暴力はある。ゼロというつもりはない。しかし件数は少ない。脅威にさらされている、というのは言い過ぎだ。

過去十数年間、インドネシア警察はテロリズムを効果的に取り締まってきた。その対象はISISだけではない。確かに1万3000の島を抱えるインドネシアにとって治安を維持するのは大きな課題だ。ただもっとも取り組むべきは格差であり、貧困の問題。テロ事件は起きている。しかし警察を狙ったものがほとんどで、市民ではない。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は大幅反落800円超安、前日の上昇をほぼ帳

ビジネス

焦点:国内生保、24年度の円債は「純投資」目線に 

ビジネス

ソフトバンク、9月30日時点の株主に1対10の株式

ビジネス

ドイツ銀、第1四半期は予想上回る10%増益 投資銀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中