最新記事

カナダ

一夫多妻「否定しない」が、25人の妻の男は「有罪」に

2017年7月26日(水)10時22分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

7月24日、判決後に報道陣に応じるウィンストン・ブラックモア Todd Korol-REUTERS

<20年越しで、やっと判決が出た。そして有罪でも、裁判官は25人の妻との結婚はすべて「神聖」なものと認める>

25人の妻と146人の子供を持つカナダ人男性が「一夫多妻」を禁じる法律に反するとして7月24日、ブリティッシュコロンビア州最高裁は有罪判決を言い渡した。「一夫多妻」を禁じる法律が施行されたのは127年前。以来初の判決ということに注目が集まっているが、この事件、すでに20年以上も揉めていた。

宗教と憲法どちらが優先か

有罪となったのは、25人の妻がいるウィンストン・ブラックモア(60)、5人の妻がいるジェームス・オ―ラー(53)の両被告。

こんなに多くの妻がいるのは理由がある。2人とも、一夫多妻婚を教義とする「末日聖徒イエス・キリスト教会原理派(FLDS)」の信者で、カナダのコミュニティの幹部だ。

(ウィンストン・ブラックモア)


バンクーバー・サン紙によると、両被告のコミュニティのメンバーはかねてから、重婚、性的虐待、国境を超えた児童の人身売買に関与しているとの疑いを掛けられていた。ただ、宗教の習慣を侵されない権利は同国憲法の「信教の自由」で保障されている一方、法律では「一夫多妻」が禁止されているという複雑な問題が絡むゆえに、20年以上、3人の特別検事が捜査に当たるも起訴に至らなかった。

事態が動いたのは2011年。同紙によると、ブリティッシュコロンビア州最高裁が下した、重婚の悪影響を防ぐためであれば「信教の自由」が制限されるのは妥当との判断を判例にして、検察は2014年、両被告の訴訟にこぎつけたという。

【参考記事】南ア大統領「妻3人、子供20人で何が悪い」
【参考記事】バチカンNo.3の「聖人」、性的虐待で起訴

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

スパイ容疑で極右政党議員スタッフ逮捕 独検察 中国

ビジネス

3月過去最大の資金流入、中国本土から香港・マカオ 

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月速報値は51.4に急上昇 

ビジネス

景気判断「緩やかに回復」据え置き、自動車で記述追加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中