最新記事

アメリカ政治

米予算教書の補助金大幅削減 痛みはトランプ支持層にも

2017年5月25日(木)09時25分

5月23日、トランプ米政権として初めてとなる予算教書が議会に提出された。低所得者や病人、地方に対する連邦補助金が大きく削減され、昨年11月の大統領選でトランプ氏に票を投じたまさにその支持層に痛みを強いる内容だといえそうだ。

トランプ米政権として初めてとなる予算教書が23日、議会に提出された。盛り込まれた内容は、小さな政府を志向する保守層の要求を反映したものだが、低所得者や病人、地方に対する連邦補助金が大きく削減されており、昨年11月の大統領選でトランプ氏に票を投じたまさにその支持層に痛みを強いる内容だといえそうだ。

予算教書でトランプ政権は、貧しい家族に食料や雑貨などを支援したり、低所得層などが医療を受けられるようにするプログラムに対する支出の大幅なカットを提案。失業した炭鉱労働者への職業訓練もカットされる公算が大きいほか、地方でヘロインなどの薬物中毒患者が激増している中、薬物治療プログラムも減額されそうだ。地方を対象にした航空機運賃補助も半分以下に削減される見通しだ。

トランプ政権は、こうした支出の削減は今後10年間での財政収支の黒字化や、国防関連などの支出増の財源を確保するためだと説明する。

これに対し、共和党議員の一部には賛成の声もあるものの、多くは選挙区に持ち帰るのが厳しい内容だとして、慎重姿勢で臨む構えを示している。

共和党のハル・ロジャース下院議員は「提案された予算削減は厳しいものだ。ただの節約なんてものじゃない。実に大幅な削減だ」と話す。ロジャース議員の選挙区である東部ケンタッキー地区は連邦政府からの補助金に大きく依存する地域の1つだ。

ロジャース氏は地元では依然、トランプ人気が続いているとしたが「(地元の)有権者がこの予算教書にどんな反応を示すか、まだ確かめる機会はない」と口を濁した。

共和党は上下両院で過半数を占めてはいるものの、今年10月からの新会計年度の予算案を通すには民主党の協力も欠かせないとみられ、先行きは不透明だ。

さらに、補助金削減などを盛り込んだ今回の予算教書は、共和党議員の反発を呼ぶ可能性があり、2018年の中間選挙を控え重要な時期を迎える中、議会運営には難しい舵取りが求められそうだ。トランプ氏自身の支持層が失われる可能性もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スペイン首相が辞任の可能性示唆、妻の汚職疑惑巡り裁

ビジネス

米国株式市場=まちまち、好業績に期待 利回り上昇は

ビジネス

フォード、第2四半期利益が予想上回る ハイブリッド

ビジネス

NY外為市場=ドル一時155円台前半、介入の兆候を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中