最新記事

ドイツ市民権

トランプ政権下、ドイツに戻るユダヤ系アメリカ人が急増の皮肉

2017年5月15日(月)14時04分
モーゲンスタン陽子

Jonathan Ernst-REUTERS

昨年11月の選挙でのトランプ勝利後、ドイツ市民権を再取得するユダヤ系アメリカ人が急増している。彼らは、ヒトラー政権下で不当にドイツ市民権を剥奪され、アメリカに渡ったユダヤ人の子孫だから、歴史の皮肉としかいいようがない。

反ユダヤ的事件と比例して申請が急増

ドイツ基本法116条2項では、1933年から45年のあいだに政治的、民族的、そして宗教的理由によって市民権を剥奪された元ドイツ国民に、市民権を再申請する権利を認めている。同法はその子孫にも適用される。

ワシントン・ポストなども報道しているが、ドイツ市民権再取得の動き自体は以前にもあった。実際に迫害を受けた世代にはドイツに戻ることなど到底考えられなかっただろうが、若い世代にはわだかまりも少なく、純粋に自分のルーツを知りたい、祖先の故郷を見たいという気持ちを表明することがタブーではなくなってきたからだ。

しかしながら、多くの申請者にとって「決め手」となったのは昨年11月の大統領選挙だという。トランプの一連の発言が、ナチス台頭を許した当時のドイツのそれを思い起こさせたからだ。ユダヤ人コミュニティの約75パーセントがヒラリー・クリントンに投票した(ドイチェ・ウェレ DW)。

実際にトランプの勝利後、アメリカ合衆国では反ユダヤ的事件が急増している。アメリカ最大のユダヤ人団体、名誉毀損防止同盟(ADL)によると、2017年第一四半期の反ユダヤ的事件はすでに前年の86%増えている。 

在ワシントンD.C.のドイツ大使館は「申請書提出への一般的な興味は昨年11月以降著しく上昇している」と米Newsweekに対するEメールで伝えている。イスラエルに次いで世界で2番目に大きいユダヤ人口を持つニューヨーク市の領事館も同様の現象を確認。2014年から15年にかけてドイツ市民権を申請したのは50人から70 人であったのが、2016年には11月だけで124 人に上昇、それ以後も増え続け、2017年3月には235件の申請があった(DW)。

【参考記事】トランプ勝利を予測した教授が説く「大統領弾劾」シナリオ

皮肉な巡り合わせ

ボストンの総領事館では2017年第一四半期に、昨年同時期の約4倍にあたる49件の申請があった。申請数の増加を受け、ただ書類を受け取るだけよりはと、ラルフ・ホーレマン総領事は定期的に小さな祝賀会を開くことを決めた。祖先の悲惨な経験にもかかわらず市民権再取得を決断したユダヤ系移民の子孫たちの勇気をたたえ、互いの懇親を促している。

ニュース速報

ワールド

焦点:北朝鮮、ICBM実戦化には新たな核実験必要か

ワールド

アングル:「トランプおろし」はあるか、大統領失職の

ワールド

焦点:トランプ氏の「口撃」、弾劾審議で孤立無援招く

ワールド

米国務長官が人種差別非難、「傷の修復必要」

MAGAZINE

特集:2050 日本の未来予想図

2017-8・15号(8/ 8発売)

国民の40%が65歳以上の高齢者になる2050年のニッポン。迫り来る「人口大減少」はこの国の姿をどう変える?

※次号8/29号は8/22(火)発売となります。

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    あの〈抗日〉映画「軍艦島」が思わぬ失速 韓国で非難された3つの理由

  • 2

    バルセロナで車暴走テロ、はねられて「宙に舞う」観光客

  • 3

    イルカの赤ちゃん、興奮した人間たちの自撮りでショック死

  • 4

    北朝鮮軍「処刑幹部」連行の生々しい場面

  • 5

    韓国人が「嫌いな国」、中国が日本を抜いて第2位に浮上

  • 6

    「ゴースト」「ドイツの椅子」......ISISが好んだ7種…

  • 7

    韓国・文大統領「日韓の障害は日本政府の変化。日本…

  • 8

    垂れ耳猫のスコフォがこの世から消える!? 動物愛…

  • 9

    トランプに「職務遂行能力なし」、歴代米大統領で初…

  • 10

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 1

    イルカの赤ちゃん、興奮した人間たちの自撮りでショック死

  • 2

    自分に「三人称」で語りかけるだけ! 効果的な感情コントロール法

  • 3

    米朝舌戦の結末に対して、中国がカードを握ってしまった

  • 4

    軍入隊希望が殺到? 金正恩「核の脅し」の過剰演出…

  • 5

    「ゴースト」「ドイツの椅子」......ISISが好んだ7種…

  • 6

    バルセロナで車暴走テロ、はねられて「宙に舞う」観…

  • 7

    北の譲歩は中国の中朝軍事同盟に関する威嚇が原因

  • 8

    英グラビアモデルを誘拐した闇の犯罪集団「ブラック…

  • 9

    あの〈抗日〉映画「軍艦島」が思わぬ失速 韓国で非…

  • 10

    「ディーゼル神話」崩壊、ドイツがEVへ急転換、一方…

  • 1

    マライア・キャリー、激太り120キロでも気にしない!?

  • 2

    トランプに「英語を話さない」と言われた昭恵夫人、米でヒーローに

  • 3

    日本の先進国陥落は間近、人口減少を前に成功体験を捨てよ

  • 4

    北朝鮮、グアム攻撃計画8月中旬までに策定 島根・広…

  • 5

    イルカの赤ちゃん、興奮した人間たちの自撮りでショ…

  • 6

    エリザベス女王91歳の式典 主役の座を奪ったのはあ…

  • 7

    ロシアが北朝鮮の核を恐れない理由

  • 8

    自分に「三人称」で語りかけるだけ! 効果的な感情コ…

  • 9

    米朝舌戦の結末に対して、中国がカードを握ってしま…

  • 10

    アメックスから見た、日本人がクレジットカードを使…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

全く新しい政治塾開講。あなたも、政治しちゃおう。
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 別冊

0歳からの教育 知育諞

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2017年8月
  • 2017年7月
  • 2017年6月
  • 2017年5月
  • 2017年4月
  • 2017年3月