インドネシアで高まる反中感情、宗教対立の選挙と雇用懸念が拍車
平均でみると、インドネシア国内の中国系住民は、他の民族グループよりもはるかに裕福である。1998年5月、スハルト大統領退陣に至る暴動の際には中国系住民が標的となり、このときの死者約1000人のうち多くは中国系住民であった。
スハルト体制下では中国の文化や言語は厳しく制限されたが、その一方で同大統領は、巨富を築いた一部の中国系企業人と親交があった。
険悪化する雰囲気
中国系キリスト教徒として初のジャカルタ知事となったプルナマ氏は「コーラン」を侮辱したとの告発を受けて裁判係争中だが、首都ジャカルタでは、同氏の投獄を求める強硬派イスラム主義者主導の大規模デモが数回にわたって起きている。プルナマ氏は、政治的な告発だとの批判もあるコーラン侮辱の疑惑を否定している。
こうした状況が中国企業の投資判断に影響を与えるかどうかの判断は時期尚早だが、いくつかの中国企業グループは、インドネシア国内の雰囲気の険悪化を憂慮しており、また企業優遇策をとるジャカルタ州知事を失うことを懸念しているという。
プルナマ知事はジョコ大統領が掲げるインフラ改革方針を実践する能力があると見られており、中国企業の多くは同知事に好感を抱いていた。こうした方針は、中国の習近平主席が掲げる、グローバル規模のプロジェクトに数十億ドルを投資する「一帯一路」政策とも相性が良い。
人口1000万人以上を擁する都市ジャカルタは、インドネシア経済における総生産の5分の1近くを占めており、西ジャワ州のバンドンと首都を結ぶ、中国の支援を受けた総工費50億ドルの鉄道建設プロジェクトなど、大規模な建設プロジェクトの舞台となっている。
今回の選挙における反プルナマ運動は、世界最大のムスリム人口を抱えるインドネシアにおける人種間・宗教間の対立を再燃させた。
「中国側が関心を持っているのは、安定性と一貫性のある法の支配だ」と前出のStikno所長は言う。「彼らが何よりも恐れているのは、中国系住民が槍玉に挙がった1998年のような状況が再現されることだ」
(翻訳:エァクレーレン)
[ジャカルタ 20日 ロイター]