最新記事

北朝鮮

北朝鮮・シリアの化学兵器コネクション

2017年4月21日(金)12時10分
李英和(関西大学教授)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載

40年にわたる密接な軍事協力関係

北朝鮮とシリアの軍事協力関係を要点だけ記せば次の通りである。

北朝鮮は1966年7月2日にシリアと外交関係を樹立した。その後、73年に第4次中東戦争が勃発するや、北朝鮮はシリアに積極的な軍事的支援を行った。この時には、戦闘機のパイロット30人、戦車兵200人、ミサイル要員300人をシリアに派遣している。北朝鮮とシリアはその後も40年間以上の長きにわたって緊密な軍事協力関係を維持してきた。この点は専門家の間では常識となっている。

例えば、米国防情報局(DIA)の元情報分析官、ブルース・ベクトル氏は、著書『金正日最期の日々』(原題 The Last Days of Kim Jong-il,2013)で、次のような事実を明かしている。北朝鮮が90年代初頭からシリアに化学兵器を販売してきたし、90年代中盤には二つの化学兵器製造施設の設計・建設を支援した。

問題なのは「現状」だ。シリアは13年、CWCに加盟した。そのシリア政府は、化学兵器禁止機関(OPCW)に申告した保有量(約1300トン)を既に全廃したことになっている。これを根拠に、アサド政権は今回の毒ガス使用を「100%でっち上げ」と居直る。だが、欧米やトルコはアサド政権軍の犯行とほぼ断定している。

兵器技術移転、資金洗浄目的の北朝鮮企業

それでは、アサド政権が使った化学兵器の出どころはどこなのか。可能性は三つだ。一つは、03年以降も化学兵器を全廃せずに隠し持っていた。もう一つは、全廃に応じたが、その後に新たな施設を造り、ひそかに製造を続けていた。三つ目はその両方である。結論から言えば、最後の説が正しい。

隠匿説について、OPCWの元責任者は未申告分約700トンが残ると指摘する(4月12日付読売新聞「シリア、現在も化学兵器数百トン...元責任者証言」)。この残存分も本をただせば、北朝鮮が支援した毒ガスだ。化学兵器は経年劣化で徐々に使えなくなるため、恒常的に更新する必要がある。だが、シリアは化学兵器を長期保存する技術と設備を持たないとされる。そうだとすれば、毒ガスを新たに製造し続けるしかない。

アサド政権はその製造施設をどのようにして入手したのか。ここに北朝鮮がシリアの大量破壊兵器開発に現在も深く関与している疑惑が浮かび上がる。この点について、筆者は北朝鮮の最近の特異動向を独自入手した。まだ報道されていない次の3点の北朝鮮企業の動きは疑惑を裏付ける。

1点目は、シリアの「朝鮮鉱業開発貿易会社」(KOMID)の動向だ。同社はその主要幹部の大半が国連の制裁対象となっている。この会社は16年、北朝鮮の兵器代表団を数次にわたってシリアに呼び入れた。目的はミサイル・化学兵器の技術移転および防空システムの構築などを支援することだった。

ニュース速報

ビジネス

焦点:米ゴールドマン決算、取引収益悪化は業界の縮図

ワールド

アングル:トランプ政権半年、8人に1人が「今なら投

ワールド

スパイサー米大統領報道官が辞任、スカラムチ氏が新広

ワールド

トランプ氏長男と弁護士の面会、特別検察官が記録保全

MAGAZINE

特集:劉暁波死去 中国民主化の墓標

2017-7・25号(7/19発売)

ノーベル平和賞受賞者・劉暁波の「非業の死」は中国民主化の終わりか、新たな始まりか

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    トランプに「英語を話さない」と言われた昭恵夫人、米でヒーローに

  • 2

    中国人の収入は日本人より多い? 月給だけでは見えない懐事情

  • 3

    北の最高指導者が暗殺されない理由

  • 4

    次の覇権国はアメリカか中国か 勝敗を占う「カネの…

  • 5

    ファミマがIT駆使で業務見直し加速 アナログ重視し…

  • 6

    ロシアが北朝鮮の核を恐れない理由

  • 7

    シャーロット王女は「公務のプロ」 監視カメラが捉…

  • 8

    エリザベス女王91歳の式典 主役の座を奪ったのはあ…

  • 9

    シャーロックとワトソンの名探偵コンビ、ドラマは衝…

  • 10

    エルサレムでの衝突はどこまで広がるのか──パレスチ…

  • 1

    トランプに「英語を話さない」と言われた昭恵夫人、米でヒーローに

  • 2

    ロシアが北朝鮮の核を恐れない理由

  • 3

    エリザベス女王91歳の式典 主役の座を奪ったのはあの2人

  • 4

    中国人の収入は日本人より多い? 月給だけでは見え…

  • 5

    北の最高指導者が暗殺されない理由

  • 6

    宇宙からのメッセージ!? 11光年先の惑星から謎の信号

  • 7

    米学生は拷問されたのか? 脱北女性「拷問刑務所」…

  • 8

    アメックスから見た、日本人がクレジットカードを使…

  • 9

    アメリカの部活動は、なぜ「ブラック化」しないのか

  • 10

    中国が「くまのプーさん」を検閲で禁じたもう1つの理由

  • 1

    中国「三峡ダム」危機--最悪の場合、上海の都市機能が麻痺する

  • 2

    アメックスから見た、日本人がクレジットカードを使わない理由

  • 3

    トランプに「英語を話さない」と言われた昭恵夫人、米でヒーローに

  • 4

    米学生は拷問されたのか? 脱北女性「拷問刑務所」…

  • 5

    ロシアが北朝鮮の核を恐れない理由

  • 6

    エリザベス女王91歳の式典 主役の座を奪ったのはあ…

  • 7

    「地球の気温は250度まで上昇し硫酸の雨が降る」ホー…

  • 8

    中国人の収入は日本人より多い? 月給だけでは見え…

  • 9

    資本主義はついにここまで来た。「自分」を売り出すV…

  • 10

    海自の護衛艦いずも 南シナ海でレーダーに中国軍と…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

全く新しい政治塾開講。あなたも、政治しちゃおう。
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 別冊

0歳からの教育 知育諞

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2017年7月
  • 2017年6月
  • 2017年5月
  • 2017年4月
  • 2017年3月
  • 2017年2月