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アメリカ経済

米株急落、トランプ手腕を疑問視し始めたウォール街

2017年3月27日(月)19時28分
リア・マクグラス・グッドマン

法案の採決が頓挫した24日、市場の期待はさらに後退した。減税や規制緩和、インフラ投資などの景気刺激策を掲げるトランプの指導力を頼みにしていたウォール街にとって、政権発足から2カ月以上経っても目玉政策が実現しない現状は、深刻な懸念材料になりつつある。

「この代替案は他の優先政策をトランプが実現できるかどうかを見極める重大なテストだった」と、英市場調査会社マルコ・ストラテジー・パートナーシップのアンドリュー・リーズは言った。

こうした懸念はトランプの支持基盤にも痛手となりそうだ。野党・民主党支持者や無党派層の大半がトランプの不支持に回るなか、米キニピアック大学が先週発表した世論調査でトランプの大統領としての仕事ぶりを支持すると答えた割合は、就任以来最低の37%だった。今や多くの人が、トランプは自分の脆弱な支持基盤すら維持できなくなるのではないかと危惧している。

トランプは政策の優先順位を間違えた可能性もある。ゴールドマン・サックスのペーズは前から、減税などに先がけてオバマケアの撤廃に取り組むのは危険だと言ってきた。政権発足後間もない段階で与党内の分断を招きかねないと判断したからだ。「共和党内で小さな謀反が起きているかのようだ」

後退する市場の期待

採決を断念した今、トランプと彼の側近は苦境に立たされている。「トランプは、党派を超えた調整ができる大統領としての地位を失った。共和党が見放さない限り、政策を進めていくことはできるだろうが」とペーズは言った。

ゴールドマン・サックスは顧客に対し、トランプが景気にテコ入れしてくれるという期待を速やかに引き下げるよう助言した。ウォール街が最も気にしているのはオバマケアの代替案ではなく、大型減税だと、同社のエコノミスト、アレック・フィリップスは言う。

「今はまだ熱気が残っているが、減税の規模は小さく、時期も予想より遅れるはずだ」とフィリップスは言う。もともと減税時期は2017年という予想だったが、「早くても2018年以降になる見込みで、最終的には2019年までずれこむ可能性もある」。

もっとも、トランプが次の優先公約として有権者に受けがいい減税実施に突っ走る可能性もある。かつてないほど、トランプは勝利を必要としているのだ。

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