最新記事

欧州政治

ドイツ世論は極右になびかない?

2017年2月24日(金)15時14分
エミリー・タムキン

フランス大統領選を控える極右政治家マリーヌ・ルペン(右)と、ドイツのペトリー Wolfgang Rattay-REUTERS

<ドイツの極右政党AfDへの支持率が失速。トランプ米大統領のような「でたらめな政治手法」が、ドイツ人に特有の警戒心を呼び起こしたのかもしれない>

ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持率がこの7カ月で最低になった。同じく選挙を控えるオランダやフランスではドナルド・トランプ旋風が極右政党の追い風になっているが、ドイツではあまり効いていない可能性もある。

【参考記事】メルケルを脅かす反移民政党が選挙で大躍進

ドイツのアレンスバッハ世論調査研究所と フランクフルター・アルゲマイネ紙が行った世論調査によると、もし選挙が今度の日曜にあるとしたらどの党に投票するか、という問いに対し、フラウケ・ペトリー率いるAfDと答えた人は8.5%。昨年7月以来初めて10%を下回り、2015年12月以来で最も低くなった。

フォルサ研究所とシュテルン誌が行った別の世論調査でも、AfDの支持率は8%にとどまった。

【参考記事】フランス大統領選で首位を走る極右・国民戦線 「ラストベルト」という悪霊

フォルサ所長のマンンフレド・ギュルナーは、AfDの支持率が下がったのは、トランプ米大統領のような「でたらめな政治手法」は、ドイツ人の警戒心を呼び起こす傾向があるからではないか、という。ドイツ人の多くは、現首相のアンゲラ・メルケルが率いる保守政党CDU(キリスト教民主同盟)か、マーティン・シュルツ前欧州議会議長を擁立する中道左派政党SPD(社会民主党)を支持している。ドイツは今経済が好調で、1990年以来最大の財政黒字を記録したことも既存政党を後押ししたかもしれない。

トランプに同調しそう

AfDはイスラム教徒排斥を訴え、党首のペトリーはトランプの大統領選勝利にツイッターで祝辞を贈っており、トランプに同調する恐れが強い。それならメルケルやシュルツのように伝統的な主流派の政治家のほうが安心だろう。AfDは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の支持者である点もトランプに似ている。

今週ペトリーはモスクワを訪問し、連邦議会の大物たちと会った。ロシア科学アカデミー・ドイツ研究センターのウラディスラフ・ベロフは、ロシアのAfDに対する関心は「客観的」なものに過ぎず、何ら怪しいところはないと言う。だが、ドイツの小政党でロシアの要人と面会できたのはAfDだけだ。

【参考記事】ドナルド・トランプはヒトラーと同じデマゴーグ【前編】

AfDは、同党がロシア政府から資金援助を受けているという疑惑を否定し、2013年の結党から一貫してロシアとの友好関係を強調してきた。もっとも、東欧との友好関係は1960年代からドイツ政治に不可欠の要素。主流派の政治家も、ロシア政府とは非常に親密なつながりを持っている。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中