最新記事

<ワールド・ニュース・アトラス/山田敏弘>

朴槿恵にも負けないほど不人気なのは、あの国の大統領

2016年12月14日(水)14時30分
山田敏弘(ジャーナリスト)

 さらに支持率4%の調査結果が出る直前には、オランド全面協力の評伝『President Shouldn't Say That(大統領がそれを言ったらダメでしょう)』が発売され、その中でオランドの数々の暴言が明らかになった。ル・モンド紙のジャーナリスト2人が連名で上梓した同書は、過去4年で61回にわたって実施されたオランドへの独占インタビューを元にまとめられている。

 その中身は、失言や暴言の連続だった。例えばオランドは、フランスの貧困者を「歯なし」と呼んでいた。またフランスの司法制度は「卑怯な組織」であり、新たなパートナーである女優が「ファーストレディになりたがる」とも述べていた。サッカーのフランス代表チームの選手は、「育ちの悪いガキたち」が突然超金持ちになったのだから、「脳みそのウェイトトレーニングが必要だ」と言い放ったとも書かれている。大臣や議会幹部を軽視する発言までしていた。

【参考記事】インターポールでサイバー犯罪を追う、日本屈指のハッカー

大統領選の不出馬を表明

 その結果、もはや再浮上の希望が限りなくゼロに近くなったオランドは、今月1日に、エリゼ宮から国民に向けてテレビ演説を行い、来年のフランス大統領選に出馬しないことを表明。現代のフランスでは初めて、再選を目指さない現職大統領となり、新たな汚名を残すことになった。

 今月5日、フランスのマニュエル・バルス首相は、オランドの後継として来年の大統領選に出馬することを表明して辞任。翌6日にオランドは、ベルナール・カズヌーブ内相を新しい首相に任命している。ちなみにカズヌーブ首相の任期は大統領選までで、近年で史上最短命の首相だ。
 
 韓国の朴とフランスのオランド、どちらも2017年には国政の表舞台から姿を消す。両者とも、史上稀に見る不人気なリーダーとして記憶されるだろう。

 さらにもう1人、低支持率で知られる主要国のリーダーがいる。ブラジルのミシェル・テメル大統領だ。

 テメルは、弾劾裁判で罷免されたディルマ・ルセフ前大統領の後釜として今年5月から実権を握り、8月に正式に大統領となった。自身も数々の汚職疑惑が指摘されるテメルだが、今年のリオ・オリンピックで大ブーイングを受けたのは記憶に新しい。

 最新の調査では、テメルを評価する国民はたったの10%程度。来年はテメルの動向が注目される。

【執筆者】
山田敏弘

国際ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版などで勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)で国際情勢の研究・取材活動に従事。訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)。現在、「クーリエ・ジャポン」や「ITメディア・ビジネスオンライン」などで国際情勢の連載をもち、月刊誌や週刊誌などでも取材・執筆活動を行っている。フジテレビ「ホウドウキョク」で国際ニュース解説を担当。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

欧州委、中国のセキュリティー機器企業を調査 不正補

ビジネス

企業向けサービス価格、3月は前年比2.3%上昇 伸

ビジネス

TikTok、簡易版のリスク評価報告書を欧州委に提

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米株高を好感 東京エレク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中