最新記事

G20

G20終了、マクロ政策協調と保護主義反対表明するも具体策乏しく

2016年9月6日(火)10時02分

 9月6日、G20は、マクロ経済政策の協調と保護主義への反対が必要との立場で一致した。写真は中国の習国家主席と米国のオバマ大統領。杭州で4日撮影(2016年 ロイター/Damir Sagolj)

[杭州(中国) 6日 ロイター] - 中国・杭州で開催されていた20カ国・地域(G20)首脳会合では、マクロ経済政策の協調と保護主義への反対が必要との立場でおおむね一致したが、グローバル化や自由貿易に立ちはだかる困難に対しては、具体策をほとんど打ち出せなかった。

中国の習近平国家主席は、G20首脳に対し財政、金融政策措置そのみでなく革新を通じて成長底上げに取り組むよう要請。

主席は閉幕に当たり「国際貿易と投資の成長エンジンを復活させることを目指す」とし、「世界貿易の減少に歯止めをかけるため、多国間貿易のメカニズムを支持し、保護主義に反対する」と表明した。

G20では、鉄鋼の過剰能力問題についても協議。米ホワイトハウスが発表した声明によると、鉄鋼などの過剰生産能力は世界的な問題であり、協調して解決する必要があるとの認識を各国首脳が受け入れた。

世界的な解決策を模索し、来年のG20で報告するグローバルフォーラムの設置が提案されている。

閉幕の数時間後に公表された共同声明では、世界経済の成長は想定よりも弱く、下方リスクが残るとの認識を表明。金融政策だけでは均衡の取れた成長は実現できないとの見解や競争的な通貨切り下げを回避する意向をあらためて示した。

英国の欧州連合(EU)離脱決定をめぐっては、世界経済の見通しをめぐる不透明感を増大させるものの、G20は経済、金融面での影響に対処する体制を整えていると指摘した。

またテロリズムや移民問題などの新たな問題が世界経済の見通しを悪化させているとし、G20は持続可能かつ力強い成長の促進に向け、利用可能なあらゆる政策手段を総動員することで合意したとした。

環境保護対策は数少ない成果の1つとなった。G20に先立って2020年以降の地球温暖化対策「パリ協定」を米中が批准し、他のG20も両国に続くよう促した。

就任後、初のG20となったメイ英首相は、保護主義が世界的に高まる中、「自由貿易によって創造された機会から労働者が確実に恩恵を受けられるよう、一段の措置を講じる必要がある」と訴えた。

国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は閉幕後、「われわれは成長を高める必要があるが、すべての人々に恩恵が及ぶよう一段と均衡が取れ、かつ持続可能で包摂的なものでなければならない」とし、より包摂的な成長が世界経済にとり優先課題になるとの認識を示した。

会議2日目となる5日には、北朝鮮が西部の黄州(ファンジュ)付近から日本海に向けて弾道ミサイルを3発発射。軍事力を世界に誇示する狙いがあると見られるが、関係が深い中国が議長国を務めるG20開催中の発射強行は、中国の面子をつぶすリスクも伴う。

中国は北朝鮮による弾道ミサイル発射を受けて、関係国に緊張を高めるような行為を控えるよう要請。米国は無謀な行為だと非難する一方、安倍晋三首相は許し難いとの認識をオバマ米大統領に伝えた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中