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米中関係

ワシントン米中首脳会談、中国での報道

2016年4月3日(日)21時04分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

核セキュリティサミットでの米中首脳会談とオバマ大統領の冷めた顔(3月31日) Lamarque-REUTERS

 ワシントンにおける核セキュリティサミット開催に際し、米中首脳会談が行われた。オバマ大統領の顔から年々消えていく笑顔が印象的だが、中国では実に輝かしく習近平国家主席の訪米を報道した。会談内容とともに報道ぶりを見る。

新華網「出訪Visit」特別ページ

 習近平国家主席(以下、習主席)は3月16日に全人代(全国人民代表大会)閉幕式を迎え、3月25日に中国共産党中央委員会(中共中央)政治局会議を主宰して終わると、3月28日からチェコのプラハに向かった。これはチェコと中国が国交を結んでから初めての中国の国家元首による訪問で、チェコのゼマン大統領は盛大に習主席を迎えた。中央テレビ局CCTVは大々的に「習‐ゼマン」会談を報道し、「中国はまた新たな戦略的パートナーを見つけた!」という言葉が微博(ウェイボー)(ミニブログ)でも飛び交った。

 もっともチェコ国内ではゼマン大統領が中国やロシアに接近していることを批判する声も少なくなく、欧米の中文網(ウェブサイト)では中国国旗に黒い液体がかけられた事件なども報道されている。

 しかし、そのような情報は完全無視。

 中国政府の通信社である新華社のウェブサイト・新華網には習主席の笑顔とともに「出訪Visit」と大書した特別ページが設けられ、続く訪米の「輝かしい」活躍がクローズアップされている(ページの冒頭が表示されるまでにしばらく時間がかかるので、少しだけ我慢していただきたい)。

 日本や欧米中文網などにおける報道を見る限り、回数を重ねるごとに冴えなくなっていく米中首脳の表情が浮き彫りになるが、そこは中宣部! 

「党と政府のメディアの名前は"党"でなければならない!」

 あんなに輝きを失っていく米中首脳会談でも、こんなに「立派に!」報道できるのだから、その腕は大したものである。

 少なからぬ国の元首の目にも、「一党支配体制」下における国家元首の位置づけの仕方は、羨ましく映るのではないだろうか。

会談内容

 3月31日から4月1日にかけて、アメリカのワシントンで核セキュリティサミットが開催され、31日には米中首脳会談が行われた。その具体的な会談内容も「出訪Visit」に詳細に掲載されている。習主席が堂々と自国の利益を主張した、実に「立派な」ものだ。

 習主席が発言した言葉として例を挙げると、たとえば以下のようなものが書かれている。

●経済問題:米中両国は貿易額、双方への投資額、人的往来などにおいて前代未聞の高い値を示している。

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