最新記事

2016米大統領選

【動画】大統領選のゲスな「ネガティブCM」、黒幕は誰だ?

11月の本選に向けて各陣営による誹謗中傷合戦が本格化していくが、辛辣すぎるネガティブキャンペーンの裏には「スーパーPAC」の存在がある

2016年3月14日(月)16時05分
小暮聡子(ニューヨーク支局)

ピーピーピー! 不動産王のドナルド・トランプがいかに放送禁止用語ばかり使っているかを非難するテレビCMは、ライバル候補のマルコ・ルビオ上院議員支持とみられるスーパーPAC「American Future Fund Political Action」が製作した AmericanFutureFund-YouTube

 アメリカは「フリースピーチ」の国だ。合衆国憲法修正第1条で「言論の自由」を保障しているこの国では、不動産王ドナルド・トランプのように罵り言葉を叫びながらでも共和党の大統領選候補者レースのトップを独走できることが証明された。

 とはいえ、アメリカにも現状を危惧している人たちはちゃんといる。こんな人物が大統領になった暁には、全世界が見守るホワイトハウスの記者会見で放送禁止用語を連発し、画面からは「ピーピー」といったかぶせ音しか聞こえてこない――とでも言いたげなテレビCMが、このほど「反トランプ」団体によって製作された。

【参考記事】「トランプ大統領」の危険過ぎる訴訟癖

「The Best Words(名言集)」と題された30秒のCMでは、まず仮想大統領のトランプが「名門大学を卒業した高学歴の自分は最高の言葉ばかりを使う」と自己紹介する。どんな名スピーチが披露されるのかと思いきや、その後に続くのは英語でタブーとされている言葉のオンパレードだ。さすがに書き起こすのは憚られるので、ピーピー言っているのを観て内容を想像していただければ......。

反トランプCM「The Best Words」(3月7日公開)

【参考記事】「トランプ現象」を掘り下げると、根深い「むき出しのアメリカ」に突き当たる

 こういったテレビCMは、米大統領選の風物詩とも言える「ネガティブキャンペーン」の一環だ。11月の大統領選本選に向けて、これから民主・共和両陣営による世にもゲスな誹謗中傷合戦が本格化していくことになる。

 ネガティブキャンペーンは同じ党内の候補者同士でも容赦がない。先に紹介した反トランプCMを製作したのは、「American Future Fund Political Action」という保守系の非営利団体で、「政治活動委員会(PAC)」と呼ばれる政治資金管理団体の1つ。トランプ降ろしを掲げてはいるが、支持政党はトランプが所属する共和党だ。

「スーパーPAC」は巨額の献金を受け付ける強力な集金マシーン

 さて、選挙シーズンにやたらと耳にするこの「PAC」という団体。おさらいしておくと、アメリカでは企業や組合、団体などが政党や政治家に直接献金することが禁止されている。それでも選挙活動に資金援助ができるよう、政治献金の受け皿となるべく組織されるのがPACだ。政治献金の合法的な抜け道ともいえる。

 長らくPACへの献金額は1人年間5000ドルまでとされていたが、2010年の最高裁判決でこの上限が撤廃されて無制限に受け入れ可能となった。こうしてPACは「スーパーPAC」と呼ばれるようになり、今や大企業や裕福な個人から巨額の献金を受け付ける強力な集金マシーンと化している。

 一方で、PACからスーパーPACになっても、候補者やその選挙活動に直接資金援助したり、候補者と連携して行動することは禁じられたままだ。つまり、ある候補者の「公式サポーター」になることはできない。そのためスーパーPACは、お目当ての候補者に直接ラブコールを送るよりも、ライバルをこき下ろすことによって支持する候補者を逆説的に応援するという宣伝活動に注力する。その最たる例が、テレビCMを駆使したネガティブキャンペーンだ。

ニュース速報

ビジネス

米第2四半期GDP統計、過度に反応するべきでない=

ビジネス

第2四半期の米GDP速報値1.2%増、想定外の低い

ビジネス

米利上げ、年内2回の可能性 経済の基調は良好=SF

ワールド

米民主党の選挙対策委、サイバー攻撃受けたこと確認

MAGAZINE

特集:世界を虜にするポケモンGO

2016-8・ 2号(7/26発売)

世界中で始まったポケモンGOの大ブレイク──。屋外型「カワイイ」ゲームの騒動は社会に何をもたらすか

人気ランキング (ジャンル別)

  • 最新記事
  • コラム
  • ニュース速報
  1. 1

    サイコパスには犯罪者だけでなく成功者もいる

    サイコパスはすべてが殺人鬼ではない。なかには、…

  2. 2

    もし第3次世界大戦が起こったら

  3. 3

    ハーバードが絶賛する「日本」を私たちはまだ知らない

  4. 4

    沖ノ鳥島問題で露呈した日本と中国の共通点

    台湾の漁船拿捕をきっかけに「島か岩か」問題が再…

  5. 5

    数学の「できない子」を強制的に生み出す日本の教育

  6. 6

    ISIS処刑部隊「ビートルズ」最後の1人、特定される

  7. 7

    日本軍と共謀した毛沢東を、中国人はどう受け止めたか?

  8. 8

    米軍は5年前、女性兵だけの特殊部隊をアフガンに投入していた

  9. 9

    英EU離脱に憤る若者たち: でも実は若年層は投票しなかった世代

  10. 10

    ISISはなぜトルコを狙うのか

  1. 1

    共和党と民主党どこが違う

    米大統領選挙は共和党、民主党いずれも党大会を…

  2. 2

    レイプ写真を綿々とシェアするデジタル・ネイティブ世代の闇

    ここ最近、読んでいるだけで、腹の底から怒りと…

  3. 3

    嫌韓デモの現場で見た日本の底力

    今週のコラムニスト:レジス・アルノー 〔7月…

  4. 4

    中国の「反日暴動」がアメリカでほとんど報道されない理由とは?

    先週末から今週はじめにかけて、中国の各地では…

  5. 5

    英国EU離脱は、英国の終わり、欧州の衰退、世界の停滞をもたらす

    英国の国民投票は、EU離脱支持が残留支持を上回り…

  6. 6

    よみがえった「サウジがポケモンを禁止」報道

    <「ポケモンはハラーム」との記事が日本のニュースサ…

  7. 7

    スマホが人間をダメにする

    インターネット時代、スマートフォン時代になっ…

  8. 8

    英国EU離脱。しかし、問題は、移民からロボティックスへ

    <世界一のグローバル都市へと成長し、移民が急増した…

  9. 9

    「ブレグジット後悔」論のまやかし

    <ブレグジットの国民投票以降、「EU離脱に投票…

  10. 10

    ジャーナリストが仕事として成り立たない日本

    <トラック運転手をして取材資金を貯めるという桜木武…

  1. 1

    テスラ車死亡事故、自動運転中にDVD鑑賞の可能性

    米電気自動車(EV)メーカー、テスラ・モータ…

  2. 2

    バングラデシュで襲撃の武装集団鎮圧、外国人ら20人殺害

    バングラデシュの首都ダッカで1日夜、レストラ…

  3. 3

    バングラ事件、邦人7人含む20人死亡 安倍首相「痛恨の極み」 

    バングラデシュの首都ダッカで1日夜、レストラ…

  4. 4

    豪下院選は大接戦、結果判明5日以降に 「宙づり議会」の可能性

    2日に投票が行われた豪総選挙の下院選は、ター…

  5. 5

    バングラデシュ人質事件、日本人は1人救出 7人安否不明

    バングラデシュの首都ダッカのレストランで1日…

  6. 6

    バングラデシュ人質事件で日本人7人の死亡確認=菅官房長官

    菅義偉官房長官は2日午後11時半過ぎに会見し…

  7. 7

    クリントン氏優勢 トランプ氏と差は縮小=米大統領選調査

    ロイター/イプソスが実施した米大統領選の候補…

  8. 8

    邦人犠牲者は20代から80代の男女、菅官房長官「断固として非難」

    菅義偉官房長官は3日午前の記者会見で、日本人…

  9. 9

    日本の改正児童福祉法、施設暮らしの子ども救うか

    金属の柵で囲まれた小児用ベッドに寝かされた赤…

  10. 10

    イラク首都の爆弾攻撃で約120人死亡、ISISが犯行声明

    イラクの首都バグダッドで3日未明、2回の爆発…

 日本再発見 「世界で支持される日本式サービス」
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
リクルート
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

0歳からの教育 育児編

絶賛発売中!

コラム

パックン(パトリック・ハーラン)

芸人もツッコめない? 巧みすぎる安倍流選挙大作戦

STORIES ARCHIVE

  • 2016年7月
  • 2016年6月
  • 2016年5月
  • 2016年4月
  • 2016年3月
  • 2016年2月