最新記事

銃犯罪

銃乱射犯に負け犬の若い男が多い理由

2016年1月14日(木)19時30分
フランク・マクアンドリュー(米ノックス大学心理学教授)

 英国の臨床心理学者ポール・ギルバートは、「Social Attention-Holding Theory(社会的注目保持力)」という概念を考案した。彼によれば、私たちは、他人の注目を集めるために互いに競い合うのだという。注目が得られれば高い地位を築くことができるからだ。他人から注目を浴びて地位が上昇すると、ありとあらゆる肯定的な感情が生まれる。一方、他の人から無視される続けると、悪意に満ちた感情、とりわけ妬みと怒りが生まれる。

 メディアが、銃乱射事件の犯人やテロリストを、はみ出し者や孤立した人間として描き出すのは不思議なことではない。彼らは往々にして、実際にそういう人たちなのだ。

 ISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)に10か月間にわたって拘束されたフランス人ジャーナリストのニコラス・ヘナンは、自分を拘束した殺意にあふれる若きジハード戦士を次のように表現している。「彼らは自らをスーパーヒーローだとみなしている。けれども実態は、イデオロギーと権力に酔いしれた、家を持たない若者に過ぎない。フランスには『愚者と悪人』という言い方があるが、彼らは、悪人というよりは愚かなだけの存在だった――殺人につながりうる愚かさというものを軽んじているわけではないのだが」

 どうやら、他の人から十分に注目されないと地位が劣っていることになり、女性とつきあう機会も減るらしい。そこに若い男性のテストステロンが加わると、他に害を及ぼすような「キレやすい」人間が誕生する。

 何百万年もかけて進化してきた「若い男性の精神構造」を変えるのは難しいかもしれない。しかし、そうした精神構造の存在を無視したり否定するのもまた不毛だ。

Frank T. McAndrew, Cornelia H Dudley Professor of Psychology, Knox College

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中