最新記事

欧州

バルト海に迫る新たな冷戦

A Nordic Cold War?

2015年8月4日(火)18時00分

「彼らのシナリオは、ノルウェー北部、(フィンランド領)オーランド諸島、スウェーデンのゴトランド島、デンマークのボルンホルム島を迅速に掌握することだった」と、報告書は指摘している。その作戦が「成功して、これらの領土がロシアの支配下に入ったら、NATOがバルト海沿岸諸国の軍備増強を図るのはほぼ不可能になる」。

 デンマークにとってボルンホルムは、昔から前線基地の島だ。ジェンセンの上官マックス・エレガード・ハンセンによると、欧州との戦争を想定したソ連の機密計画では、この島のレーダー基地は真っ先に狙われる標的の1つにされていた。

「われわれの基地は戦術核兵器を落とされる計画になっていた。最初にすべきは敵の『目』をつぶすこと。ここは東側諸国を見張る目だったから、狙われて当然だろう」と、ハンセンは言う。わずか6年前にはロシアも軍事演習に加わっており、この島でロシア将校とウオツカを飲み交わしたというのに、大きな様変わりだと、ハンセンは笑った。

 ロシアによる3月の大規模軍事演習から間もなく、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、アイスランドは防衛協定を強化。ロシアによるクリミア併合やウクライナ介入を引き合いに、「政治的目標を達成するためなら国際法に違反してでも軍事力を使う」ロシア政府を非難する共同声明も発表した。

 しかしCEPAの報告書は、北欧諸国やバルト海沿岸諸国がロシアの脅威に対して無防備な状態だと指摘する。「地域の安全保障が改善されなければ、世界で最も成功している軍事同盟であるNATOが無力だと証明されかねない」

 北欧諸国も軍事費を増大させてはいる。スウェーデン政府は今年、16~20年の間に軍事予算を12億ドル増やすことを決めた。ノルウェーの今年の軍事費も昨年比で3.5%の上昇だ。

 5月に発足したフィンランドの新政権は、年々減少している軍事費(今年は約30億ドル)を増大に転じさせる見込みだ。フィンランドとスウェーデンはまた、長年の中立政策を捨ててNATOに加盟することも検討している。だがCEPAが指摘するように、加盟には少なくとも18カ月かかるだろう。

膨大な軍事費が無駄に

 CEPAの報告書が最大の問題点として論じたのは、9カ国(デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、エストニア、ラトビア、ポーランド)の防衛戦略がばらばらであることだ。これらの国々の軍事費を合わせると330億ドル。適切に使われればロシアの脅威を回避するのに十分な額だが、現実はそうなっていない。

ニュース速報

ワールド

北朝鮮の太平洋での水爆実験、専門家は「大災害」の恐

ビジネス

ギリシャ、第3次支援終了後も監督へ=ユーログループ

ビジネス

7月改定景気動向指数、一致指数は前月比-1.1ポイ

ワールド

米ハリケーン救済基金への企業寄付、合計で2.25億

MAGAZINE

特集:対中国の「切り札」 インドの虚像

2017-9・26号(9/20発売)

中国包囲網、IT業界牽引、北朝鮮問題解決...... 世界の期待が高まるが、インドの実力と真意は不透明だ

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    フィンランドで隠し撮りされた「怪物」の悲劇

  • 2

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 3

    金正恩の狂人っぷりはどこまで本物か?

  • 4

    北朝鮮「ロケット米全土到達」警告にトランプ反発 …

  • 5

    新型アップルウオッチは、ポストiPhoneの大本命

  • 6

    猫は固体であると同時に液体でもあり得るのか!? 

  • 7

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 8

    北朝鮮、水爆実験強行なら分水嶺 トランプ政権は深…

  • 9

    ペットショップは「新品」の犬を売ってはいけない

  • 10

    世界初の頭部移植は年明けに中国で実施予定

  • 1

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 2

    フィンランドで隠し撮りされた「怪物」の悲劇

  • 3

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 4

    世界初の頭部移植は年明けに中国で実施予定

  • 5

    ペットショップは「新品」の犬を売ってはいけない

  • 6

    北朝鮮外相「太平洋でかつてない規模の水爆実験」示唆

  • 7

    ロヒンギャを襲う21世紀最悪の虐殺(後編)

  • 8

    猫は固体であると同時に液体でもあり得るのか!? 

  • 9

    トランプ、北朝鮮の「完全破壊」を警告 初の国連演…

  • 10

    ロヒンギャを襲う21世紀最悪の虐殺(前編)

  • 1

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 2

    ビンラディンの「AVコレクション」が騒がれる理由

  • 3

    北朝鮮問題、アメリカに勝ち目はない

  • 4

    強気の北朝鮮 メディアが報じなかった金正恩の秘密…

  • 5

    iPhoneX(テン)購入を戸惑わせる4つの欠点

  • 6

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 7

    「人肉は食べ飽きた」と自首した男と、とんでもない…

  • 8

    フィンランドで隠し撮りされた「怪物」の悲劇

  • 9

    イルカの赤ちゃんはなぶり殺しだった

  • 10

    ダイアナが泣きついても女王は助けなかった 没後20…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

全く新しい政治塾開講。あなたも、政治しちゃおう。
日本再発見 シーズン2
ニューズウィーク試写会「ザ・サークル」
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 別冊

0歳からの教育 知育諞

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2017年9月
  • 2017年8月
  • 2017年7月
  • 2017年6月
  • 2017年5月
  • 2017年4月