最新記事

人口問題

国連が恐れる高齢化の津波

2050年には5人に1人が高齢者に──。途上国でも急速に進む高齢化がもたらす恐怖の未来予想図

2012年10月2日(火)16時21分
エレン・コロニー

不安だらけ 高齢者の社会保障の充実を訴えるデモ(サンフランシスコ、2011年) Robert Galbraith-Reuters

 2050年までに世界の人口の5人に1人を60歳以上の高齢者が占めるようになる。年金や保健・医療サービスが迅速に整備されなければ、病気や貧困に苦しむ老人が急増する──。

 国連人口基金(UNFPA)が国際高齢化デーの10月1日に発表した報告書「21世紀の高齢化」は、
世界的に進む急速な高齢化に警鐘を鳴らし、「大胆な政治的決断」を訴えるものだ。

 報告書によれば、60歳以上の人口は今後10年で10億人を突破。2050年には世界の人口の22%にあたる20億人を超え、15歳未満の人口を上回るという。これは医療や栄養状態、教育、経済状況の改善が進んだおかげで、新興国や発展途上国でも寿命が延びているためだ。

 だが、そうした国々では、急増する高齢者を支える社会保障制度などは整っておらず、遠くない将来、深刻な問題を引き起こしかねない。ラトビアやキプロスなど、すでに60歳以上の高齢者の半数が貧困に苦しんでいる国もある。

 UNFPAのババトゥンデ・オショティメイン事務局長は、高齢化対策には「大胆な政治的指導力が必要だ」と語った。「高齢化の対策を取ることは可能だが、まずは問題を認識する必要がある」

 高齢化対策が必要なのは「高齢者、特に女性高齢者への差別や虐待、暴力を顕在化させ、事態を調査し、未然に防ぐ」ためでもあると、報告書は指摘している。

「人生の終盤がすべての人にとって前向きな時間」であってほしい──報告書に記された未来を実現するために、すべての国が今すぐ行動を起こす必要がある。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中