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イギリス

キャメロン首相のしたたか予算カット術

児童手当の削減案が国民から意外にも高い支持を集めた理由

2010年10月18日(月)15時33分
ウィリアム・アンダーヒル(ロンドン支局長)

厳しい改革 自らの支持基盤である高所得層が損する方針を先に打ち出したキャメロン Oli Scarff-WPA Pool/Getty Images

 ロンドンの新聞の見出しだけで判断すると、キャメロン英首相は苦境に立たされているように思える。政府は先週、社会保障費の削減計画の第1弾として、高所得層を児童手当の支給対象から外す方針を表明。これにより年間10億ポンドの予算が浮くという。

 この方針にメディアがかみついた。デーリー・ミラー紙は、子供1人当たり週に約19ポンドの収入減になる政策に主婦らは激怒するだろうと警告した。キャメロンは保守党の強固な支持層を失うのか。

 しかし世論調査の結果は逆だった。新聞の批判的な見出しに反し、多くの国民は改革に好意的だ。ある調査によると、国民の5人に4人以上がこの政策を支持している。

 児童手当の見直しは、国民の15%に当たる高所得層だけに適応される。「最も大きな肩に最も大きな荷物を載せるのは公平なやり方だ」とキャメロンは主張する。

 まず富裕層に厳しい姿勢を見せたのは賢明だ。より広範な歳出削減策が今月中に発表される見通し。この大規模な予算カットが低所得層に与える打撃をキャメロンは承知している。

 自らの支持基盤の金持ちが損する方針を先に発表するのは自分の首を絞める行為のように見えるが、実際は賢い政治なのだ。

[2010年10月20日号掲載]

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