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タリバン「ドミノ理論」の勘違い

The Domino Theory Returns

アフガニスタンの「タリバン化」が隣国パキスタンを崩壊させる──そんな理論は90年代の歴史を無視している

2009年8月10日(月)13時30分
ロバート・ハディック(スモール・ウォーズ・ジャーナル副編集長)

 なぜアメリカはアフガニスタンで戦争をしているのか。オバマ政権のアフガニスタンとパキスタンにおける政策によれば、作戦の目標は「アルカイダとその安全な避難場所を崩壊、壊滅させて勝利すること」だ。

 しかし、外交評議会の上級研究員で国防省防衛政策委員会の新メンバー、スティーブン・ビドルに言わせれば、もっと重要な理由がある。それは、タリバンの支配がパキスタンに及ぶのを食い止めることだ。 この「21世紀版ドミノ理論」は、共産主義勢力が周辺国に拡大すると主張して反共政策を推し進めた60年代当時よりも、理にかなっているのだろうか。

 ビルトはアメリカン・インタレスト誌でこう主張している。


 タリバンが再びアフガニスタンを掌握すれば、国家の力を利用して世俗国家のパキスタンを不安定化させるだろう。そうなれば、パキスタン崩壊のリスクは高まる。パキスタンにあるタリバンの拠点はアフガニスタン政府にとって脅威だと専門家はよく指摘するが、実際は双方にとって危険な存在だ。アフガニスタンが不安定化すれば、パキスタンの文民政府に深刻な脅威をもたらすことになる。これこそ、アメリカがアフガニスタンに介入する最大で唯一の目的だ。パキスタンの政情不安が悪化するのを食い止め、アルカイダが「核武装の聖域」を築く危険性を阻止するのだ。


 ビデルの論文の中身は概ね素晴らしいのだが、90年代の状況を忘れているようだ。タリバンは96~01年まで、パキスタン政府の後押しでアフガニスタンのほぼ全域を支配した。当時のパキスタンは、政治抗争や政府上層部の汚職、軍事クーデターなどで不安定な状態が続いていた。それでも、イスラム過激派がパキスタンを支配するという心配はまったくなかった。

米軍の作戦がタリバンをあおる皮肉

 ビデルの主張とは裏腹に、タリバンの支配するアフガニスタンが安全弁の役割を果たし、パキスタンがイスラム主義の圧力に屈するのを防いだと言えなくもない。アフガニスタンとパキスタンのタリバンは2つの異なった勢力だが、アフガニスタンにおけるアメリカの軍事行動がパキスタン国内でのタリバンの活動を煽った可能性はある。アメリカの対アフガニスタン政策が、パキスタンの政情不安のリスクを低めるどころか高めているのかもしれないのだ。

 これは、パキスタンの情報機関・軍統合情報局(ISI)の見方とも合致する。ISIは7月21日、ニューヨーク・タイムズ紙の記者たちを招いて、2時間にわたるブリーフィングを行った。その中で、米海兵隊が7月初旬にアフガニスタン南部ヘルマンド州で行った大規模なタリバン掃討作戦に異議を唱えた。彼らが恐れているのは、タリバンの戦闘員が国境を越えてパキスタンのバルチスタンへ逃げ込み、同地を不安定化することだ。

 アフガニスタンでのNATO(北大西洋条約機構)軍の活動を中止せよと言っているわけではない。アフガニスタンに安定した自治をもたらす可能性が少しでもあるのなら、戦う価値はある。ビデルも書いているように、アメリカの行動に関係なく、さまざまな理由でパキスタンが崩壊する可能性はある。アフガニスタンの情勢を監視したり、テロリストやその資産を封じ込めるためには、長期的な軍の駐留は必要かも知れない。

 ビデルも指摘しているが、オバマ政権がアフガニスタンでの軍事行動に国民の支持を獲得し続けるのは容易ではない。ドミノ理論は引き合いに出さないほうが賢明だ。


Reprinted with permission from FP, 5/8/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

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