最新記事

欧州

ベルルスコーニが安泰な理由

お抱えメディアが演出するありえない支持率と買収と

2009年6月2日(火)16時13分
バービー・ナドー(ローマ支局)

 イタリアのベルルスコーニ首相は自らを「世界で最も人気のある指導者」だと主張してはばからない。億万長者の彼は大手メディアグループを所有する一方で、首相として国営テレビ局に強い影響を及ぼしている。彼の人気を「証明」しているのはそうしたお抱えのメディアだ。

 ベルルスコーニの影響下にあるメディアが行った世論調査によれば、彼の支持率は75%。「記録的な数字だ」と、当の本人は誇らしげだ。とはいえ、独立系の調査結果とは食い違いが見られる。調査会社イスポスの調べでは支持率は40%、IPRマーケティングでは60%だった。

 ともあれ、驚くべき数字には違いない(ヨーロッパのほかの国では指導者が支持率をごまかしたら辞職に追い込まれかねないが)。3期目に入った72歳のベルルスコーニはどのようにして政界で生き残ってきたのだろう。

 ベルルスコーニは自分や側近が汚職で告発されるのを防ぐため、法律を改正したと一部で非難されている。90年代後半には、法廷で不利な証言をさせないために弁護士に60万ドルを支払ったことも明らかになった。

 私生活では艶福家として知られる。最近では18歳の下着モデルと噂になり、19年連れ添った夫人から離婚を申し立てられている。

 だが反対勢力がいくら辞任を要求しても、当面はベルルスコーニの座は安泰だろう。お抱えのメディアを通して、自分に都合のいい政敵のイメージを有権者に吹き込むことに成功しているからだ。

[2009年6月 3日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中