最新記事

結婚

経済学が夫婦の危機を救う

2012年4月20日(金)16時29分
ポーラ・シューマン
ジェニー・アンダーソン

透明性の確保が大事

 そう、「夫婦仲の経済学」の第2の秘訣は「透明性」にある。透明性こそ市場経済――とあなたの性生活――の潤滑油だ。O夫妻は相手の気持ちをおもんばかったりしない。人の気持ちをあれこれ考えるのは時間の無駄だし、ストレスにもなる。つまり、コストが高くなりすぎるのだ。
 
 私たちは本を書くにあたって数百人に話を聞き、1000人以上にアンケートに答えてもらった。性生活が充実していると答えた人たちには、ほぼ共通点があった。それは(1)互いに魅力を感じている。(2)柔軟性がある。(3)セックスのコストを下げている。
 
 彼らの多くには、その気になったときの合図(シグナリング)がある。たとえば「お楽しみはどう?と言う」「何も言わずにベッドに行く」「コンドームをつける」など。そうすることでうさぎ並みのセックスライフを保っているのである。

 ハイジとジャックは結婚して数年がたつが、性生活は次第に月並みになっていた。月並みどころか、ほとんど機能していないといったほうがいいかもしれない。だが、どちらもそれを修復しようとはしていなかった。無関心でいるほうが楽だからだ。
 
 ある日、数人の友達を自宅に招いたとき、話題が夫婦生活に及んだ。ある女性が言った。「何かで読んだけれど、アメリカの夫婦の性生活は平均週2回なんですって。本当かしら」。ここから活発な意見交換が始まった。「うちも週2回かな」という人。週1回だと告白する人。
 
 ジャックとハイジは、前回のセックスがいつだったかさえ思い出せなかった。お互い顔を見合わせて気まずい思いをした。結局、2人が問題を認めるには、カウンセリングに通う必要があった。彼らはお互いの気持ちを話し合うことがなかったからだ。
 
 繰り返そう。彼らはお互いの気持ちを話し合うことがなかった。
 
 結婚を誓い、トイレと銀行口座を共有し、赤ん坊を産み育てている2人が話し合わないのは奇妙に感じるかもしれないが、これは事実である(そして決して珍しいことではない)。いずれにせよ、こんな状態では性生活が楽しくなるわけがない。性生活を充実させるインセンティブがどこにもないのだから。

 ジャックとハイジは、透明性を確保することによって、大人のおもちゃやコスプレにも挑戦するようになった。話をすることで、ハイジがポルノ好きで、ジャックが下着フェチであることも初めてわかった。
 
 もうこれでおわかりだろう。夫婦の性生活を充実させるには経済と同様、<コストの低減>と<市場の透明性>が欠かせないのである。経済学が陰鬱な科学だなんてとんでもない!

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は1100円超安で全面安、東京エレクが約2

ワールド

イスラエルのイラン報復、的を絞った対応望む=イタリ

ビジネス

米ゴールドマン、24年と25年の北海ブレント価格予

ワールド

官僚時代は「米と対立ばかり」、訪米は隔世の感=斎藤
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中