最新記事

仮想通貨ウォーズ

仮想通貨はバブル崩壊後、これだけ変わった──価格、信用力、規制

THE CRYPTO WORLD, SINCE 2017

2019年12月5日(木)12時05分
藤田岳人(本誌記者)

ILLUSTRATION BY ANDREW BAKER/GETTY IMAGES PLUS

<「日本の規制は厳し過ぎるし、ほとんど意味もない」と語る慶應義塾大学の坂井豊貴教授。日本では2年前の暴落とともに注目度も下がっていたが、ビットコイン、リブラ、デジタル人民元の覇権争いが起こり、世界的に注目が高まる仮想通貨の現状について聞いた>

1210-thumb-240xauto-176397.jpg2017年の高騰で一気に高まった仮想通貨への世間的な注目度は、翌年初頭の暴落などで急速に低下した。それが2年近い時を経て、リブラやデジタル人民元などで、再び注目を集めている。

ではこの2年で、仮想通貨の世界にはどんな変化が起きていたのか。『暗号通貨vs.国家 ビットコインは終わらない』(SBクリエイティブ)などの著書がある慶應義塾大学の坂井豊貴教授(経済学)に、本誌編集部の藤田岳人が聞いた。

◇ ◇ ◇

──2018年初頭、なぜ仮想通貨の価格が暴落したのか。

一般的には、中国マネーが引き揚げたことが、大きな要因だったと考えられている。ただ、2017年12月と2018年1月が異常に高騰していただけで、それが戻っただけの面も大きい。

──日本では、同時期に起きた仮想通貨取引所コインチェックでの通貨流出事件が注目されたが。

マイナス要因にはなっただろうが、それほど価格は下がらなかったはずだ。仮想通貨のマーケットは世界なので(日本の状況は)そこまで相場全体に影響を与えていないと思う。

──日本では暴落と流出事件で、世間的な関心や信用が急速に低下した。

日本にいると、ビットコインのありがたみが分かりにくい。円が抜群に安定しているからだ。一方でベネズエラやトルコのような政情が不安定な国では、通貨の価値が非常に不安定なので、社会や経済が不安定化したときにビットコインに資産を逃がすということが起きる。

国家の重要な存在意義の1つは私有財産の保護だが、法定通貨には国家の浮沈に応じて私有財産の価値が上下するリスクがある。国家の浮沈と連動しない「非国家」の通貨には独自の価値が認められつつある。

──世界的に見れば、仮想通貨への信用は低下していないということか。

この問い自体が、実は現状に即していない。ビットコインは資産価値が20兆円近くある。既に人類有数の資産クラスであり、価値を認める認めないという話はとっくに終わっている。20兆円分も発行されている通貨は世の中にそれほどない。

金融サービスが充実していない途上国では「金融包摂(全ての人が利用できるようにすること)」の観点から、仮想通貨・デジタル通貨への関心が高い。中国でデジタル決済が発展したのは、金融サービスが社会の隅々まで行き渡っていなかったからでもある。国際決済銀行(BIS)でさえ、国家がデジタル通貨を発行することにだんだん肯定的になってきている。

──先進国ではどうか。

仮想通貨が大きな脚光を浴びているというのは、世界的な趨勢だ。特に仮想通貨リブラを発表したフェイスブックなど、「金融のようなことがしたい」人たちからの注目度は高い。通貨は発行したものが大きな利益を得ることもあり、発行を目指している企業は多いはずだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、利下げ前に物価目標到達を確信する必要=独連

ワールド

イスラエルがイラン攻撃なら状況一変、シオニスト政権

ワールド

ガザ病院敷地内から数百人の遺体、国連当局者「恐怖を

ビジネス

中国スマホ販売、第1四半期はアップル19%減 20
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中