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前作を超えたアイアンマン

How "Iron Man 2" Soars

この夏もマンネリ化したシリーズ続編だらけだが、「アイアンマン2」は思いがけない掘り出し物

2010年7月20日(火)14時39分
ラミン・セトゥデ(エンターテイメント担当)

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 この夏の映画ときたら続編ばかりだと、友人が文句を言っていた。『トイ・ストーリー3』『セックス・アンド・ザ・シティ2』『エクリプス/トワイライト・サーガ』と、続編のオンパレードだ。

『シュレック・フォーエバー』に至っては設定に困り、われらが緑色の主人公シュレックは過去の記憶を抹消され、フィオナ姫も友達もいない別世界に放り込まれる。

 そんな作品を見たがる客がいるかって? 実は山ほどいる。続編はハリウッドにとって最高においしい商売だ。綿あめのように量産できる上、固定客も付いている。
 
 興行成績で見ると、頂点に君臨する『タイタニック』と『アバター』(既に続編の計画が進んでいる)を除けば、上位のほとんどがシリーズもの。3位が『ダークナイト』(5億3300万ドル)、5位は『シュレック2』(4億4100万ドル)、8位は『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』(4億2300万ドル)。しかも、これは『スター・ウォーズ』シリーズを勘定に入れないでの話だ。
 
 だから『アイアンマン2』の試写会に行くのは少し苦痛だった。1作目は気に入ったが、正直あまり覚えていなかった。一緒に行った友人は前作を見ていなかったが、それも大した問題ではないと思った。どうせ『カサブランカ』のような名作ではない。遊園地の乗り物のような映画だから、と。

 実際に作品を見てどうだったかというと、私は部分的に正しかった。遊園地の乗り物には違いないが、これほどアドレナリンが出たのは初めてだ。『アイアンマン2』は『スパイダーマン2』以来最高の続編で、理想的な大衆娯楽作品と言える。クールで爽やかで、大人は子供に戻ったような幸せな気分になれる。観客が子供なら、もっとハッピーになれるはずだ。

ダウニーJr.の絶妙な皮肉

 主人公のアイアンマンこと、トニー・スターク(ロバート・ダウニーJr)はアフガニスタンで負傷した大富豪。自ら発明したロボットのようなスーツで身を固め、市民を危機から救い出す。

 今回、アイアンマンの敵となる不気味なロシア人科学者アイバン・バンコを演じるのはミッキー・ローク。おちぶれたプロレスラーを描いた『レスラー』で見事にカムバックしたロークは、今回も観客を失望させない。彼が操る電磁ムチに触れなくても、表情を見ただけで感電しそうだ。

 手ごわい敵に加え、アクションもアメコミのヒーロー映画の中では指折りの迫力で、ポップコーンを隣に回すのも忘れてしまいそう。特に悪のアイアンマン軍団と戦う最後のシーンはすごい。

 だが作品の要は、主役のダウニーだ。遅咲きスターのダウニーはここ数年、『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、『シャーロック・ホームズ』でも主演しているが、私はアイアンマンの彼が好きだ。

 気の利いた皮肉では彼の右に出る者はいないし、作品全体にいい意味で神経質なエネルギーをもたらしている。いつもなら堅苦しい相手役のグウィネス・パルトロウから温かみを引き出したのも彼の功績だ。前作のテレンス・ハワードに代わって、ローディ空軍中佐を演じるドン・チードルとの絡みのシーンもいい。スカーレット・ヨハンソン演じる美人スパイは、さすがのダウニーもお手上げだったが、そんなこと誰も気にしない。

『アイアンマン2』を見終わった後に残る疑問は1つだけ。『アイアンマン3』はいつ?

[2010年6月23日号掲載]

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