最新記事

自動車

ベンツの弟分「スマート」が日本で躍進している理由

2017年8月4日(金)17時02分
森川郁子(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

京都動物園前に店を構える「smart center 京都, the garden」。日本家屋とスマートのロゴや車の組み合わせがユニークだ(記者撮影)

マウスのようなかわいらしい見た目に、個性的な色が目を惹くコンパクトカー「スマート」。高級車メルセデス・ベンツを展開する独ダイムラーの小型車ブランドだ。近頃、都市部でよく目にするようになった。

日本で最初に発売されたのが2000年。今年で進出17年目を迎えるが、主力製品「フォーツー(fortwo)」が2人乗りだったこともあり、なかなか販売を伸ばせずにいた。だが、2015年に4人乗りの2代目「フォーフォー(forfour)」が投入されると再び人気が急上昇。2016年は4508台と前年比4.5倍の台数を売り上げた。

見た目にそぐわず広々した車内とポップなデザインが、女性や若い層にも受け入れられた。価格も216万円からと、日本のコンパクトカーの競合となり得る戦略的な値段に抑えている。輸入車の中でも、車種別の伸び率では圧倒的だ。

toyokeizai170804-chart.png

(出所)日本自動車輸入組合

人気上昇中のスマートが京都とタッグ

ダイムラーは現在、地域ごとの特性を生かしながらスマートの魅力をアピールする「スマートシティプロジェクト」を15カ国42都市で展開している。今年6月、これが日本でも始まった。選んだのは、日本の古都・京都である。

メルセデス・ベンツ日本(MBJ)の上野金太郎社長は「歴史がありながらも新しさを模索する街の姿と、伝統と革新をコンセプトとするスマートのイメージがぴったり合った」と選定理由を語る。コンパクトなスマートは、京都の狭い道でもすいすいと走れる。

中国の南京では、ショッピングモールにおいてスマートの広い荷室を活用したフリーマーケットを開催。ポルトガルのリスボンでは、スマートの小ささに着目したガラス張りの「スマート最小ショールーム」を期間限定で設置するなどの取り組みが行われた。

toyokeizai170804-2.jpg

ポルトガル・リスボンで設置された「最小ショールーム」(写真:メルセデス・ベンツ日本)

一方の京都ではプロジェクトの一環として、スマートの専売店「smart center 京都, the garden」(以下、スマートセンター)が6月17日にオープンした。見た目からして一般的なディーラーの店舗とは明らかに違った作りとなっている。

京都動物園の目の前に位置するスマートセンターは、京都の町になじむ古民家風のいでたち。しかし店内に入ると一転、白を基調としたモダンな雰囲気だ。出迎えるのは、金閣寺をイメージした金色の特注スマート。来店客は大きなパネルを操作しながら、2つ以上の色を組み合わせた外装など、独自の配色のスマートを注文できる。専売拠点であるスマートセンターならではのサービスだ。

日本庭園とスマートが同居する

さらに、店の奥の小径沿いには小ぶりな日本庭園がある。店の名前にも「the garden」とつくだけあって、四季を楽しめる本格的な作りだ。その側には、ピンクのスマートが駐めてある。

庭の前の別棟には、オリジナルのスマートを作ることができる「テーラーメイド」の工房がある。先述のカスタムカーは外装のみを選んでいたが、ここでは内装やシートの色や縫い目のパターンも自在に選び、自分だけのスマートを注文できる。一からカスタムすると400万円ほどかかる。

toyokeizai170804-3.jpg

テーラーメイドの工房では内装やステッチの色まで自在に選べる。スマートブランドの紹介掲示も併設(記者撮影)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&Pとナスダック下落、ネットフリッ

ワールド

IMF委、共同声明出せず 中東・ウクライナ巡り見解

ビジネス

NY外為市場=円・スイスフラン上げ幅縮小、イランが

ビジネス

米P&G、通期コア利益見通し上方修正 堅調な需要や
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中