最新記事

投資の基礎知識

売買単位の統一と株式併合で、株価にはどんな影響があるのか

2017年8月2日(水)12時51分
岡田禎子 ※株の窓口より転載

NicolasMcComber-iSock.

<全国証券取引所が進めてきた株式の売買単位を100株に統一する取り組みも、いよいよ最終段階に入っている。売買単位が10分の1になることで株価にどういう影響があるかは、同時に実施される株式併合が鍵になる>

株式を購入しようと発注する際に、「この銘柄って100株単位? それとも1000株?」と迷った経験はありませんか? 1000株だと最低投資金額が大きすぎて仕方なく断念......なんてこともあって困りますよね。しかし、そんな心配もまもなく不要になります。

なぜ売買単位を統一するのか?

株式の売買単位(単元)は、その株式を取引するときの最低株数で、銘柄ごとに異なります。2017年1月現在では、100株と1000株の2種類のみですが、かつては1株、10株、50株......など、8種類もの単位がありました。

しかし、このように売買単位が何種類も存在する市場は国際的にも稀で、とても使い勝手が悪く、投資家にとっての利便性を低下させる原因となっていました。

売買単位を100株に集約すれば、必要な最低投資金額を把握しやすくなりますし、銘柄同士の比較も容易になります。市場の使い勝手が向上し、国内外から多くの投資資金が入ってきます。また、中長期的には流動性の向上にもつながります。

さらに投資家の立場で言えば、取引を行う際に「100株だけ売却するはずが、1000株売ってしまった!」などの誤発注のリスクが減る、という効果も期待できます。

2018年10月までに100株に統一!

そこで、東京証券取引所をはじめとする全国証券取引所は、2018年10月までに売買単位を100株に統一することとしています。この計画は2007年11月以降、全国証券取引所が「売買単位の集約に向けた行動計画」として進められてきました。

当初8種類あった売買単位も、いまでは1000株と100株の2種類に統一され、2018年10月にはすべての銘柄が100株単位になる、という最終段階まで来ています。東証上場の企業の92.9%が、すでに100株単位へと変更しています(2017年7月27日時点)。

必要資金が10分の1になる?

売買単位がすべて100株になることで、今後、個人投資家にとってどのような影響があるのか、気になりますよね。とくに「株価への影響はどうなるの?」が知りたいところです。

ここで注目すべきは、株を買うときに投資する「必要最低投資金額」がどうなるか、です。売買単位の変更により、1単位あたりの必要最低投資額が小さくなれば、投資資金が少ない投資家でも手を出しやすくなり、流動性が向上し、プラス効果となります。

(参考記事)資産運用は「余裕資金」で行うべき? なかなか投資できない人の大きな誤解

たとえば、1株の株価が1000円、売買単位が1000株の銘柄なら、必要最低投資金額は1000円×1000株=100万円です。この銘柄が、1000株→100株の売買単位の統一を行うと、1000円×100株=10万円となり、必要最低投資金額が10分の1に下がります。

100万円は無理だけど10万円ならば......と、これまで躊躇していた個人投資家などが新たに買いに入ることが考えられます。その結果として取引量や出来高が増えれば、短期で売買するトレーダーや機関投資家も参入し、より活発な売買が行われるようになります。

このように流動性が向上することで、株価にはプラスに働きます。企業側にとっても、個人投資家のような中長期保有の株主が増えると株価が安定する、というメリットがあります。

【参考記事】決算発表で株価はどう動くか、決算前のチャートから読み解く

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエルがイランに攻撃か、規模限定的 イランは報

ビジネス

米中堅銀、年内の業績振るわず 利払い増が圧迫=アナ

ビジネス

FRB、現行政策「適切」 物価巡る進展は停滞=シカ

ビジネス

英インフレ、今後3年間で目標2%に向け推移=ラムス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中