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"アベノミクス"への熱狂と警戒〈後編〉

A Lesson in “Abenomics”

市場の投資マインドを刺激した効果は大きいが、長期的な構造改革を後回しにしているという批判も

2013年2月13日(水)18時26分
ジャスティン・マッカリー

 前編より

...一方で、経済立て直しの大きな障害となっている消費の低迷に対してはほとんど何の手も打たれていない。雇用が安定せず、将来の収入に不安が付きまとう状況が続く限り、消費の拡大など見込めない。

 消費税がこの3年以内に現行の5%から10%へと増税されれば、家計はさらに圧迫される。

 東京のテンプル大学現代アジア研究所のロバート・デュジャリック研究所長は、「消費の回復のためには多くの対策が必要」と指摘する。「20年もの間不況にあえいできた国民を状況が変わったと説得するには、さまざまなことをする必要がある」

 また「アベノミクスに欠けているのは、女性の社会進出を後押しし、子どもを持ちやすい環境を作るミクロ経済の部分における構造改革だ」とも指摘する。

 経済評論家たちは、アベノミクスがかつてのバラまき型の公共事業へ逆戻りしているのかどうかを見定めようとしている。重要な選挙区で人気取りのために不必要な公共事業を行うというのは、戦後続いた自民党政権を特徴づけるものだった。

 上智大学の中野晃一教授は「結局、地方の支持者たちにを中心に利害関係者に対するバラまきに終わるという可能性はある」と指摘する。「だから金の流れをよく見ておく必要がある」

 さらに安倍は、日本がGDPの2倍以上という巨額の財政赤字かかえている問題は後回しにしている様子だ。円高から脱却した輸出業者は喜んでいるが、エネルギーをはじめ輸入に大きく依存しているモノの価格は円安によって上昇するため経常収支を悪化させている。

 一方でTPPへの参加については、自民党の多くの議員が市場開放に反対する農業団体からの支持を受けているため、安倍政権にとっては優先順位が低い政策のようだ。

 先般、国会で可決された10兆円を超える景気刺激対策を含む国の予算総額は過去最高となった。加えて与党の経済政策を支持する新しい日銀総裁が来月選ばれる予定であることなど、アベノミクスは勢いに乗っている。

 麻生太郎財務大臣は先週「この政府にとっての最大の優先課題は、雇用と所得を増やし、円高とデフレによる不況からこの国の経済を立て直すことだ」と言った。

 崇高な目標だが、こうした前向きな目標によって深刻な経済問題が覆い隠されている。安倍が真剣に構造改革に取り組まなければ経済問題の傷口は広がるばかりだろう。

 オリエンタルエコノミスト誌のリチャード・カッツ編集長が今週のウォールストリートジャーナル紙にこう書いている。「健全なマクロ経済政策は構造改革の痛みを和らげ成果を上げるのに役立つが、金融緩和や景気刺激策といった安倍のマクロ政策は構造改革から逃れるための鎮痛剤としか思えない」

 鎮痛剤は、打ち続けなければ効果が切れるのだが。

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