最新記事

テクノロジー

ヤフーはアップルの逆転劇に学べ

マイクロソフトに叩きのめされたアップルがいかにして頂点に上り詰めたか

2012年6月26日(火)17時15分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

得意技は ヤフーは悪い事態をさらに悪化させる Brendan McDermid-Reuters

 ヤフーは大した企業だ。失態を犯した後はいつも事態をさらに悪化させる方法を見つける。最近でいえば、学歴詐称問題でスコット・トンプソンCEOを退任に追い込んだこと。在任期間はわずか4カ月、しかもこの5年で5人目のCEOだった。

 騒動の間、ヤフーの業務は停滞した。昨年の利益は05年を下回り、株価は00年代初頭のドットコム不況以来、低いままだ。

 ヤフーは自らを救う道のヒントを得るためにアップルを参考にしてみてはどうだろう。アップルは15年前には瀕死の状態だったが、今では世界一の株価を誇る。ヤフーがアップルの逆転劇から学べるポイントとは?

■リーダーを持つ アップルにはスティーブ・ジョブズがいた。ジョブズは創設者でありながらCEOを解任され、11年後に復帰した。一方でヤフーは、元取締役副社長のロス・レビンソンを「暫定CEO」に据えた。でもヤフーには永続的なCEOが必要だ。シリコンバレーの小物のレビンソンではなく。

■事業の目的を明確にする 復帰後のジョブズが最初に取り組んだのは製品ラインを極端なまでにシンプルにしたこと。一方のヤフーは何をやっているのか。ポータルサイト? メディア企業? 検索エンジン? 一体何の会社か分からない。

■敗北を認めて前進する アップルはPC戦争でマイクロソフトに負けたことを認め、次の大きな波を狙うべきだと判断。10年後にiPhoneを発表した。

 ヤフーは10年後の世界がどうなっているかを予測し、それに備える必要がある。モバイル機器とクラウドサービスが有望だが、いずれもヤフーがほとんど手を付けていない分野だ。

■辛抱する ジョブズが復帰したのは97年だがアップルの利益が跳ね上がったのは05年。

 ヤフーはどんな戦略を取るにしても、進路を変えない勇気を持つことが必要だ。現在のヤフー幹部はおそらく長期戦略を持っていない。いま実権を握っているのはトンプソンを解任した「もの言う株主」のダン・ローブ。ローブはヤフーの事業を解体していくつかの部門を身売りし、その利ざやを手に去っていくようだ。残された部門もマイクロソフトやAOLに買収されてしまうだろう。

 ヤフーが買収されるのは残念だが、少なくとも見るに堪えない今回のような失態劇に幕を引くことはできる。

[2012年5月30日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

ロイターネクスト:米第1四半期GDPは上方修正の可

ワールド

プーチン氏、5月に訪中 習氏と会談か 5期目大統領

ワールド

仏大統領、欧州防衛の強化求める 「滅亡のリスク」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中