最新記事

株式投資

ツイッターで株価を予測するヘッジファンド

ネット上に溢れる「つぶやき」を解析して株価動向を予測するアルゴリズムの驚くべき的中率

2011年8月17日(水)16時37分

情報の宝庫 「つぶやき」には相場を動かす不安や強欲のサインがあふれている Mario Anzuoni-Reuters

 ツイッターの活用法も、ついにここまできた。先ごろ、資産運用の戦略決定にツイッターを利用するヘッジファンドが登場したのだ。運用開始から1カ月とはいえ、スタンダード&プアーズ(S&P)500社株価指数や平均的なヘッジファンドを上回る実績を挙げている。

 金融ニュースサイトのファイナンシャル・ニュースいわく、「電子商取引の精度を高めるためにソーシャルメディアをうまく活用した初の成功例」だ。

 この注目のヘッジファンドは、ロンドンを拠点とするダーウェント・キャピタル。「ソーシャルメディアを基にしたヨーロッパ初のヘッジファンド」を自称し、7月には1.85%の運用成績をあげた。この時期、S&P500社株価指数は2.2%下落し、平均的なヘッジファンドの運用益は0.76%だった。

 ファイナンシャル・ニュースは、同ファンドのツイッター活用術について次のように書いている。


 同社はツイッターにあふれる数百万もの「つぶやき」がもたらす感情のデータを、市場の動向を予測するために利用している。その戦略の基になっているのは、英マンチェスター大学と米インディアナ大学が10月に発表した研究結果。ツイッター上の感情を示す数々の言葉は、ダウ工業株30種平均の日々の動向を占うのに利用できることを示したものだ。


 ダーウェント・キャピタルは入手可能な「つぶやき」の10%をランダムに解析し、「警戒」「元気」「満足」などの言葉に注目して感情ごとに仕分ける。このデータが市場動向の予測に用いられる。マンチェスター大学とインディアナ大学の研究では、当初から株式相場の動きを約88%の確率で予測できたという。

「4次元」になった投資の世界

 ダーウェントの創業者でファンドマネージャーも務めるポール・ホーティンは8月12日、米ケーブルテレビ局CNBCにこう語った。「(7月には)ツイッターによるアルゴリズムは非常に有用だった。感情が市場を動かす大きな要素となっていたので、その『信号』を手にする意義はとても大きかった」

 ダーウェントは5月に発表したプレスリリースの中で、リアルタイムの「感情分析」が「金融市場の『不安と強欲』を洞察するうえで、重要な役割を果たす」ようになることを期待している、と記している。

「多くの投資家は昔から、金融市場は人々の不安と強欲に動かされていると認めてきたが、そうした感情を定量化する技術もデータもこれまで存在しなかった」と、ホーティンはCNBCに語った。「これは、いわば4次元の世界だ」

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米債務急増への懸念、金とビットコインの価格押し上げ

ワールド

米、いかなる対イラン作戦にも関与せず 緊張緩和に尽

ワールド

イスラエル巡る調査結果近く公表へ、人権侵害報道受け

ビジネス

利上げの可能性排除せず、経済指標次第=米シカゴ連銀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中