最新記事

ヨーロッパ経済

IMFの性スキャンダルで欧州に大激震

IMF:What Now After Sex Scandal?

欧州経済の立ち直りを支えてきたストロスカーン専務理事の性的暴行疑惑によってユーロ圏の債務危機が再び悪化する恐れも

2011年5月17日(火)17時30分
トーマス・ムチャ

 IMF(国際通貨基金)のドミニク・ストロスカーン専務理事が性的暴行容疑で逮捕・訴追されたのは、これ以上ないほど最悪のタイミングだった(一泊3000ドルのホテルのスイートルームで女性従業員に性的暴行を加えるのに、もっといいタイミングがあった、という意味ではない)。

 オンライン新聞「グローバルポスト」によれば、ストロスカーンには次のような行為を働いた容疑がかけられている。


 警察によれば、ホテル従業員は32歳のアフリカ出身の移民女性で、10代の娘とともにブロンクス地区に住んでいる。彼女の証言によれば、5月14日に勤務するホテルの一室に立ち入ったところ、裸の男性がバスルームからベッドに走るのが見えたという。彼女は謝罪して立ち去ろうとしたが、男性は彼女につかみかかり、ドアを閉めて鍵をかけ、バスルームに引きづりこんでオーラルセックスを要求し、彼女の下着を脱がせようとしたという。


南部の債務国と北部の健全国をつなぐ仲介役

 ストロスカーンは容疑を否認し、無罪を主張している。だが本当に問題なのは、暴行疑惑の真相や裁判における非難合戦の中身ではない。

 今後のグローバル経済の見通しという点で、今回のスキャンダルが露呈したタイミングは、まさに最悪。ギリシャもポルトガルもスペインも、今まさにIMFの支援を必要としている。これまでにもイタリアやアイルランド、ベルギー、そしてヨーロッパのほぼすべての国々が、債務危機の最中にさまざまな形でIMFのサポートを受けてきた。

 少なくとも短期的には、これほど重要な国際機関のトップにセックススキャンダルが降りかかったことで得をするに人は誰もいない。

 突き詰めて言えば、政治とは人々が望んでいないことをやらせる手腕を指す。その意味で、ストロスカーンの仕事ぶりは見事だった。

 ストロスカーンの実務的なリーダーシップの元、IMFは財政赤字に苦しむヨーロッパ南部の国々と、他国の救済に消極的な有権者が多いドイツやオランダのような北部の財政健全国の間を取りもつ仲介役を担ってきた。

 ストロスカーン自身も、欧州中央銀行(ECB)のジャンクロード・トリシェ総裁やフランスのサルコジ大統領といった政財界の指導者や経済学の権威らと緊密に連携して仲介役の任務を果たしてきた。ギリシャのパパンドレウ首相は、IMFとEUに支援を要請する数カ月前からストロスカーンにアドバイスを求めていた。

 IMFの元主任エコノミスト、サイモン・ジョンソンはニューヨーク・タイムズ紙に対して、過去2年間にストロスカーンが果たした役割をこう表現した。「ヨーロッパの人々は経済問題に目覚めるのが遅かった。だがストロスカーンは、人々を脅す代わりに、うまく褒めながら行動を起こさせた。そうすることで、彼は一連の危機をIMFへの評価を回復させるチャンスととらえ、IMFをかつてないほど中心的な存在に押し上げた」

ニュース速報

ワールド

アングル:日本で核シェルターの需要増、北朝鮮情勢の

ワールド

カナダ、木材巡る米との対話で前進、合意はまだ見通せ

ビジネス

トランプ米政権、税制改革案の概要発表 法人税15%

ワールド

北朝鮮の脅威増大、必要なら空母で攻撃可能=米軍司令

MAGAZINE

特集:国際情勢10大リスク

2017-5・ 2号(4/25発売)

北朝鮮問題、フランス大統領選、トランプ外交──。リーダーなき世界が直面する「10のリスク」を読み解く

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    アメリカが北朝鮮を攻撃したときの中国の出方--環球時報を読み解く

  • 2

    北朝鮮ミサイル攻撃を警戒、日本で核シェルターの需要が急増

  • 3

    25日に何も起こらなくても、北朝鮮「核危機」は再発する

  • 4

    米軍、北朝鮮ミサイル迎撃用THAADを韓国南部に搬入開始

  • 5

    北朝鮮、軍創設記念日で大規模砲撃演習 米原潜は釜…

  • 6

    中朝同盟は「血の絆」ではない。日本の根本的勘違い

  • 7

    英「ロシアに核の先制使用も辞さず」--欧州にもくす…

  • 8

    「いま米軍が撃てば金正恩たちは全滅するのに」北朝…

  • 9

    もし第3次世界大戦が起こったら

  • 10

    ロシア軍が北朝鮮に向け装備移動か 大統領府はコメ…

  • 1

    25日に何も起こらなくても、北朝鮮「核危機」は再発する

  • 2

    米空母「実は北朝鮮に向かっていなかった」判明までの経緯

  • 3

    ロシア軍が北朝鮮に向け装備移動か 大統領府はコメント拒否

  • 4

    北朝鮮ミサイル攻撃を警戒、日本で核シェルターの需…

  • 5

    「いま米軍が撃てば金正恩たちは全滅するのに」北朝…

  • 6

    北朝鮮、軍創設記念日で大規模砲撃演習 米原潜は釜…

  • 7

    アメリカが北朝鮮を攻撃したときの中国の出方--環球…

  • 8

    北朝鮮「超強力な先制攻撃」を警告 トランプは中国…

  • 9

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 10

    北朝鮮・シリアの化学兵器コネクション

  • 1

    25日に何も起こらなくても、北朝鮮「核危機」は再発する

  • 2

    「いま米軍が撃てば金正恩たちは全滅するのに」北朝鮮庶民の本音

  • 3

    ユナイテッド航空「炎上」、その後わかった5つのこと

  • 4

    北朝鮮に対する軍事攻撃ははじまるのか

  • 5

    米空母「実は北朝鮮に向かっていなかった」判明まで…

  • 6

    15日の「金日成誕生日」を前に、緊張高まる朝鮮半島

  • 7

    北朝鮮への米武力攻撃をとめるためか?――習近平、ト…

  • 8

    北朝鮮近海に米軍が空母派遣、金正恩の運命は5月に決…

  • 9

    オーバーブッキングのユナイテッド航空機、乗客引き…

  • 10

    ユナイテッド機の引きずり出し事件に中国人激怒、の…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

日本再発見 「外国人から見たニッポンの不思議」
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 別冊

0歳からの教育 知育諞

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2017年4月
  • 2017年3月
  • 2017年2月
  • 2017年1月
  • 2016年12月
  • 2016年11月