グーグルが甦らせるナチスの「悪夢」
情報収集をめぐる疑惑
それでも、ドイツ人の約30%はインターネットを利用しない。ストリートビューに反対する人はおそらく、それがどんなものかも分かっていないのだろうと、ハンブルク大学のシュミットは言う。
「グーグルが自宅前にカメラを置いて生中継しようとしている、と勘違いしている人もいるかもしれない。抗議は無知から生じている部分もある。よく分からないから、『安全策を取るほうがよさそうだ』という考え方だ」
シュミットは同じマンションの他の住民と話し合うつもりだ。これはプライバシーの問題ではないと、彼は考えている。企業が利益のために公共データを集めていることが問題だという。
「公道の使用を制限するつもりはないが、公共の場を使ってカネを取ろうというのはいただけない」と、シュミットは言った。ドイツ人はもともとプライバシーを重視する。ナチス時代(およびベルリンの壁が崩壊する前の東ドイツ時代)、常に監視されていた結果、それまでになくプライバシーの問題に敏感になった。「プライバシーはドイツでは非常に重要だ」と、シュミットは言った。
グーグルが収集した情報について何か隠しているのではないか、という懸念もある。グーグルは今年5月、撮影車が街の写真を撮る以外に、パスワードで保護されていない無線LANのWi‐Fi(ワイファイ)による通信内容まで誤って収集していたことを認めた。6月には、収集した情報をドイツなど現地の当局に引き渡すことに同意している。
フランクフルトに住み、歴史の観点からグーグルの動きを見ているクラウゼは次のように語った。マンションの外観がオンラインで公開されるのは構わない。しかし、ストリートビューはグーグルの計画の序の口にすぎないのではないか、と。
「住所なども何か金儲けに利用しているという噂がある」と、クラウゼは言う。「でも、何が真実かは分からない」
(GlobalPost.com特約)
[2010年9月 1日号掲載]