最新記事

テクノロジー

グーグルの通訳フォンに重大な疑問

言語の異なる相手と通話できる自動通訳システムを開発中というが、私たちの会話をサーバーに保存するつもりなのか

2010年2月9日(火)17時23分
ケビン・ケラハー(テクノロジーライター)

夢の携帯 音声認識+自動翻訳=電話傍受機? Lucas Jackson-Reuters

「異なる言語を話す人同士の電話での会話をほぼ瞬時に翻訳する技術が登場した」という英タイムズ紙電子版の記事が議論を呼んでいる。グーグルの携帯用OSアンドロイドを搭載した電話が小型の自動通訳フォンに変わるというのだ。

「グーグルは音声認識と自動翻訳という既存の技術を発展させ、2年から3年以内に基本的なシステムを完成することを目指している。世界には6000語以上の言語があるが、成功すればコミュニケーション革命が起きる可能性がある」と、記事は報じている。

 近年大きな進歩を遂げている自動翻訳と音声認識という2つの技術を結合させるアイデアだ。発想自体は新しくない。グーグルは05年に行われたマスコミ向けの工場見学会でこの技術についてほのめかしていた。完成まであと数年かかるが、この新技術はちゃんと完成するのか、そうなったら私たちの生活はどう変わるのか、という議論に花が咲いている。

会話の内容も広告に利用される?

 この技術についての私の第一印象は少し違った。異なる言語を話す2人の人間がグーグルの翻訳技術を使って会話するなら、その会話はグーグルのサーバーを経由することになる----。ということは、グーグルは自分たちのサーバー上にこれらの会話を保存する気なのか?

 電話の会話を翻訳するためには、グーグルは話された言葉をまずテキストデータに変換し、それから翻訳しなければならない。つまり、グーグルはサーバーに翻訳されたすべての会話を保存することができる。現在グーグルがウェブでユーザーにさまざまなサービスを提供しながら、ユーザー個人の検索履歴やほかの情報を記録しているのと同じやり方だ。もちろんこのデータはグーグルの莫大な収益源であるターゲット広告に大いに役に立つ。

 抜け目ないグーグルのことだから、利用者に翻訳された会話をサーバーに保存しない選択肢を与えるだろう。今は称賛ばかりのこのアイデアだが、そのうち疑問視されるようになるはずだ。政府による傍受を嫌がる人たちが、グーグルだったらまあいい、となるだろうか?

*The Big Money特約
http://www.thebigmoney.com/ 

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中