最新記事

テクノロジー

iPhoneが宗教を救う?

God Bless This Gadget

宗教界が信者獲得や祈りのツールとして、携帯電話のアプリケーションやSNSを積極的に活用し始めた

2009年9月28日(月)14時06分
エフゲニー・モロゾフ(オープン・ソサエティー財団研究員)

 次なる宗教戦争で使う新兵器をお探しなら、iPhoneを選んではどうだろう。実際、各宗派のデジタル聖戦の旗手たちは、既に入信を促したり神への祈りをささげやすくするソフトウエアを次々と開発している。

 例えば「iブレッシング」というプログラムはユダヤ教徒に、どの食材にどの祈りの言葉がふさわしいかを教えてくれる。肉を食べてから乳製品を口にするまでに空けておくべき時間も、「パーブオーメーター」が教えてくれる。「シドゥール」はGPS(衛星利用測位システム)で信者の居る位置を測定し、正しい礼拝時刻を解析して知らせてくれる。

 敬虔なカトリック信者には「iブリビアリー」がある。ミサで使う祈りの言葉をスペイン語とフランス語、英語、ラテン語、イタリア語で表示する優れ物だ。

 ガリレオ以来、テクノロジーと宗教は常に微妙な関係にあった。印刷機の登場はキリストの福音を広め、新たな信者を獲得するのに役立ったが、一方で教会による情報の独占を大きく脅かした。こうした「過ち」を繰り返すことなく技術革新を利用するため、多くの宗派が最先端のコミュニケーション技術を導入し始めている。

バチカンの神父がアプリ開発

 とはいえ、最近までバチカンは「インターネットと携帯電話の時代」に否定的だった。法王庁の広報局長フェデリコ・ロンバルディによれば、「静寂を守り人の内面を成長させることが以前より難しくなった」からだ。

 だが、考えを改めたらしい。この5月には法王自ら「今の若者は......新しいメディアを通じて人とつながり、コミュニケーションを深め、相互理解を発展させる偉大な力を手に入れた。人脈づくりや情報探し、アイデアや意見の共有にも、そうした技術を活用している」と評価している。

 この方針転換には、若き神父パオロ・パドリーニ(36)の功績がある。新技術に造詣が深いパドリーニは、バチカン初のiPhone用アプリケーション「iブリビアリー」を開発。各種のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じてバチカンから情報を発信するサイト「Pope2You」も立ち上げた。

 デジタルメディアとしての技術的完成度は高い。法王の最新スピーチや活動情報を利用者に配信するiPhoneのアプリケーションや、動画投稿サイトYouTubeには法王のビデオ演説を視聴できるチャンネルなどもある。

コーランの一節を「着メロ」に

 誰もが編集に参加できるネット上の百科事典ウィキペディアの技術を使った「ウィキカト」というサイトもあり、そこに法王の発言やメッセージを掲載して世界に発信している。

 イスラムの人たちも負けていない。今や信者たちはオンラインで活発に自らの信仰を論じている。その熱気は、宗派対立によるテロが多発した頃のバグダッドを思わせる。言うまでもなく、熱心なイスラム教徒はコーランの一節を「着メロ」に使っている。これもまた自らの宗教的アイデンティティーを確認する手段だ。

 しかし「ウィキカト」の実験で明らかになったように、中身がつまらなければアクセスは(従って信者は)増えない。最近では、サイトへの投稿も減っている。
 それでもバチカンをはじめとする宗教団体が今の努力を続ける限り、いずれはデジタル時代の風土になじむことができるだろう。その頃までに若者たちは、もっと別なメディアに移っているかもしれないが。

[2009年8月26日号掲載]

ニュース速報

ビジネス

インタビュー:18年3月期増益必達、米がリスク=新

ワールド

ユーロ弱過ぎ、ECB金融緩和で=メルケル独首相

ワールド

英との離脱交渉、6月19日の週に開始へ=EU側代表

ビジネス

インタビュー:世界は常に不確実、リスク分散図るオル

MAGAZINE

特集:トランプの陰謀

2017-5・30号(5/23発売)

アメリカを再び揺るがす大統領側近たちの策謀──。「ロシアゲート」はウォーターゲート事件と同じ展開になるか

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    トランプ政権のスタッフが転職先を探し始めた

  • 2

    「最大で178万円」高騰する北朝鮮からの脱出費用

  • 3

    給食費未納の問題を「払わない=悪」で捉えるな

  • 4

    「折れない心」を持っている人には、信頼できる人間…

  • 5

    初外遊の憂鬱、トランプはアメリカ料理しか食べられ…

  • 6

    「やっちゃだめ」を全部やっちゃうトランプ大統領

  • 7

    菅官房長官「共謀罪法案の人権報告書簡に抗議」 国連…

  • 8

    「これでトランプを終わらせる」マイケル・ムーアが…

  • 9

    中国「一帯一路」国際会議が閉幕、青空に立ち込める…

  • 10

    細菌の感染ルートを探るには、お札を追え!

  • 1

    ニクソンより深刻な罪を犯したトランプは辞任する

  • 2

    トヨタとホンダをまねた中国自動車メーカーが躍進!

  • 3

    初外遊の憂鬱、トランプはアメリカ料理しか食べられない!

  • 4

    トランプ、最高機密をロシア外相らに話して自慢

  • 5

    共和党はなぜトランプを見限らないのか

  • 6

    「これでトランプを終わらせる」マイケル・ムーアが…

  • 7

    習近平の顔に泥!--北朝鮮ミサイル、どの国への挑戦…

  • 8

    日本はAIIBに参加すべきではない--中国の巨大化に手…

  • 9

    トランプのエルサレム訪問に恐れおののくイスラエル

  • 10

    トランプ降ろし第3のシナリオは、副大統領によるクー…

  • 1

    25日に何も起こらなくても、北朝鮮「核危機」は再発する

  • 2

    ディズニーランド「ファストパス」で待ち時間は短くならない

  • 3

    ロシア軍が北朝鮮に向け装備移動か 大統領府はコメント拒否

  • 4

    北朝鮮ミサイル実験「失敗」の真相

  • 5

    北朝鮮ミサイル攻撃を警戒、日本で核シェルターの需…

  • 6

    北朝鮮をかばい続けてきた中国が今、態度を急変させ…

  • 7

    性的欲望をかきたてるものは人によってこんなに違う

  • 8

    シャチがホホジロザメを餌にし始めた

  • 9

    性科学は1886年に誕生したが、今でもセックスは謎だ…

  • 10

    「いま米軍が撃てば金正恩たちは全滅するのに」北朝…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

日本再発見 「外国人から見たニッポンの不思議」
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 別冊

0歳からの教育 知育諞

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2017年5月
  • 2017年4月
  • 2017年3月
  • 2017年2月
  • 2017年1月
  • 2016年12月